2人の即戦力左腕

　昨季42年ぶりの最下位に沈んだ西武。今年はスローガン「Change　UP！」を掲げて大きく変わることを宣言している。

　変革を目指す中、春季キャンプで注目されているのがドラフト1位・隅田知一郎とドラフト2位・佐藤隼輔の「即戦力左腕」コンビだ。菊池雄星という大黒柱が抜けた後、先発左腕が手薄なチーム状況が続いていた。隅田をノドから手が出るほど欲しい。ドラフトでは4球団が競合したが見事に当たりクジを引き当てた。常時140キロ後半のキレのある直球にカーブ、スライダー、カットボール、スプリット、チェンジアップ、ツーシームと多彩な変化球を操り奪三振能力が高い。球の出どころが見にくく、その投球スタイルはソフトバンク・和田毅を彷彿とさせる。

　辻発彦監督も「真っすぐのキレが良く、変化球も多彩。腕が振れて攻め込む投球ができる。打者との駆け引きにも優れ、状況に応じた投球ができてゲームメーク能力も抜群。1年目から先発ローテーションに入って、ほかの選手と切磋琢磨しながら優勝に導く投手になってもらいたい。将来的にはチームの、そしてジャパンのエースになれると思います」と高く評価している。

　佐藤も即戦力の先発左腕だ。ドラフト1位で消えてもおかしくない逸材だっただけに、隅田と「両獲り」できたのは会心のドラフトと言えるだろう。ヒジを柔らかく使ったフォームから最速152キロの直球にスライダー、チェンジアップをテンポ良く投げ込む。内外角に投げ分ける制球力が持ち味で、昨季新人で9勝をマークした楽天・早川隆久に似ている。隅田と共に、開幕から先発ローテーションとして稼働することが期待される。

　昨季のチーム防御率3.94はリーグワースト。先発陣はチーム防御率4.16でパ・リーグ唯一の4点台だった。だが、決して投手がいないわけではない。昨季の成績を見ると、エースの高橋光成は自己最多の11勝をマーク。松本航も自身初の2ケタ勝利をマークした。今井達也も自己最多の8勝、「将来のエース」として期待される大型右腕・渡邉勇太朗も夏場から先発ローテーションに定着し、4勝を挙げたが、5番手以降の先発投手がなかなか固定できず首脳陣も苦労した。

能力の高い選手がそろう

「西武は投手王国になる可能性を秘めています。今井は好不調の波が激しいが、潜在能力を考えればもっと勝たなければいけない投手です。渡邉も今季は開幕から先発枠に入れば2ケタ勝利が現実的な目標になる。高橋光、松本、今井、渡邉の4本柱はすべて右腕だが、隅田、佐藤の両左腕が加わることで先発陣は一気に厚みが増す。新型コロナ禍で来日は不透明だが、先発では新外国人のエンス、バーチ・スミスもいます。昨季は最下位に沈みましたが、18、19年はリーグ連覇を飾るなど勝ち方を知っている選手が多い。ケガや不調で精彩を欠いた山川穂高、外崎修汰が本来の状態を取り戻せば、強力打線で得点力も上がるし投手陣を援護できる。個々の能力が高い選手はそろっているので、投打がかみ合えば優勝を狙えるでしょう」(スポーツ紙デスク)

　昨季は2年連続最下位だったヤクルト、オリックスが共にリーグ優勝を飾っている。辻監督は就任6年目を迎えた。パ・リーグは今年も混戦が予想される。屈辱を味わった西武が悔しさをバネに、「主役」になる可能性は十分に秘めている。

写真＝BBM