悪条件下でも動じずに

国学院久我山高は有田工高との1回戦で勝利し、出場4回目でセンバツ初勝利を飾った
■第4日第1試合(3月22日)
国学院久我山(東京)4-2有田工(佐賀)
天候不良により、予定の午前9時より3時間28分遅れの開始となった第1試合。国学院久我山高は有田工高との1回戦を控え、早朝からモチベーションの維持に努めていた。エースの国学院久我山高・成田陸(3年)は言う。
「今日、試合をやる。決心。強い気持ちを持とうと、準備してきました」
右腕・成田は丁寧な投球で、9回2失点完投。打っては3回裏と7回裏に適時打を放ち、2安打2打点で、チームの勝利(4対2)に貢献した。国学院久我山高は春4回目の甲子園出場で、うれしいセンバツ初白星を挙げている(夏は2019年に3回目の出場で初勝利)。
グラウンドを含めた難しいコンディション下、しかも大舞台・甲子園で力を発揮できたのはなぜか。国学院久我山高は昨年11月末、
イチロー氏(マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)から指導を受けているが、その「金言」が一因であることは間違いない。
同氏による打撃、走塁など技術的なアドバイスはもちろんのことだが、精神的な部分でも役に立つことが多かったという。
過去に指導を受けた関係者によると、練習との向き合い方で、試合の結果は大きく左右するという。プレッシャーがかかる場面で、いかに100パーセントのパフォーマンスを引き出すか。日々の取り組みの中で、公式戦の場面を想定し、実践していかないといけない。
調子自体が悪い日もある。体調面が万全でなく、どうしても気持ちが乗ってこない日もある。仮に70パーセントの力しか出せない日も、その最大値を出す努力を重ねる。繰り返しになるが、常日ごろから、試合をイメージおけば、慌てることはないという思考だ。
2時間3分。国学院久我山高はさまざまな悪条件が重なる中でも、ふだんのプレーができた。練習のための練習ではなく、試合のための練習。使い古されたフレーズのようにも映るが、最も大事なメンタル。成田は試合後、「イチロー効果」について語っている。
「野球に対する熱意。もっとうまくなりたいという、向上心が勉強になりました。野球に対する考え方が、変わったと思います」
国学院久我山高はイチロー氏に「勝利」という形で、恩返しできた。昨夏は同氏から指導を受けた智弁和歌山高が全国制覇。19年夏、国学院久我山高は2回戦で敗退しており、初の「1大会複数勝利」への期待が高まる。
写真=牛島寿人