ファンに愛された大洋を象徴

フルスイングを貫き、本塁打、そして三振を量産した田代
プロ2年目となる1977年の開幕戦で本塁打を放ち、その後も5試合連続など4月に11本塁打、シーズンでも球団新記録となる35本塁打。その一方でリーグ最多の118三振。ここぞの場面であっさり三振に倒れることも多く“人間扇風機”と揶揄されながらも、すさまじい飛距離の本塁打でファンを魅了した。それが大洋の“オバQ”
田代富雄だ。豪快さともろさが同居したフルスイングは、連勝して浮上しても連敗してさらに沈み、それでもファンに愛された当時の大洋を象徴していた。
振り回さなければ巧打者なのだが、一発を狙って大振りした。ツボにはまれば勢いはすさまじい。開幕戦に強く、79年には3打席連続本塁打も。球団の売り出し策で本塁打の数だけヘルメットに星印をつけたシーズンには、最終的に頭頂部まで星で埋まった。“三振王”は通算3度も、本塁打王のタイトルはないまま現役引退。しかし、その引退試合こそ、田代の真骨頂だった。
シーズン無安打のまま迎えた91年10月10日の
阪神戦ダブルヘッダー第2試合(横浜)、3回表の第2打席が最後の打席。二死満塁という絶好の場面だった。田代らしいフルスイングで、打球は左翼席へ。シーズン初安打、そしてプロ最後の安打は、通算7本目の満塁本塁打となった。
ホームランか、三振か。そんなフルスイングで多くの長距離砲が本塁打を量産し、また三振に倒れてきた。その危なっかしさを田代ほどファンに愛された男はいないのではないだろうか。
写真=BBM