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コリジョン・ルール導入から6年、走者の意識やチームの方針はどう変化した?/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.2016年にいわゆるコリジョン・ルールが導入されてから6年が経過しました。それ以前と比べてどのような変化があると思いますか。走者の意識、チームの方針を含めて解説をお願いします。(東京都・65歳)


中日時代の井端氏の走塁


A.ギャンブルスタートにセーフティースクイズも一時増えた。ただし守備側も対策をしており、それらも減少傾向に

 コリジョン・ルールが導入されたころ、私は現役を引退して巨人のコーチ就任1年目でした。その当時は三塁ランナーがホームに突入する際に、頭から滑り込もう、かわしてベースタッチしよう、回り込みながらホームに入っていこうなどと、このルールのランナー側への利点を最大限生かせるように対策を練り、選手たちに話をしたものです。ランナー側にとってはとても厄介であったキャッチャーのブロックが禁止となり、タッチプレーとなったわけで、なるべくホーム突入時にタッチされる部分を減らそう、と考えました。キャンプや普段の練習でも、コリジョン対応にかなりの時間を割いたものです。ランナーの練習ももちろんですが、守る側、キャッチャーの練習もです。

 それ以前との変化ということで言えば、今までならばストップだった微妙なタイミングの打球に対しても、ホームに突っ込む機会が増えたことが挙げられます。「どうかな?」であれば「突っ込め」と指導してきました。走者二塁からのヒット1本でのホーム生還や、走者三塁からの内野ゴロでのギャンブルスタートなどがそうです。

 また、このルールの導入で一時期増えたのが、セーフティースクイズではないでしょうか。走者三塁で、打者はバント。三塁ランナーは打球が転がれば(※この判断には細かいテクニックがあるのですが、ここでは「転がれば」の表現にとどめておきます)ホームを狙う、というプレーです。

 ただ、5年も6年も経つと、これが当たり前になりますし、守る側も慣れてきます。攻撃側のギャンブルスタートも減ってきているのではないでしょうか。というのも、ルール導入当時はキャッチャーもコリジョンを取られるのを極度に恐れて、完全にホームベースを空け、送球が逸れてもなるべくランナーに接触しないように、腰の引けたタッチをしていましたが、送球が逸れれば捕球を優先して捕りに行きますし、そこからタッチもします。ブロックや、あからさまに走路をふさぐようなことはなくなったにしても、キャッチャーもかわされないようなテクニックを身に付けてもいますし、ルール導入当時ほどガチガチに縛られてやっているわけではありませんね。

 走者三塁での内野の守備隊形……と言うと大げさですが、ルール導入以前よりも走者三塁で前目に守るようにもなりました。コリジョンをとられるような判定も少なくなってきたように思います。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2022年3月28日号(3月16日発売)より

写真=BBM
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