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母国ドミニカ共和国で呼吸法を学び投球に生かしているバルデス。シンカーを低めに集めゴロを打たせる投球で強豪・アストロズを勝利へと導いている
アストロズの28歳左腕フラムバー・バルデスは現在のMLBでゴロを打たせる投手としてはピカ一である。打球が上に飛ばない。フライ率10.1パーセントは、2位のジャイアンツのローガン・ウェブの22.6パーセントと大差だ。ゴロ数÷フライ数の6.50も断トツ1位。ちなみに
大谷翔平はそれぞれ38.7パーセント、1.00である。
優劣の話ではない。投手として異なるタイプということだ。4月7日の開幕戦、一番打者の大谷は初球の94マイルのシンカーを強振、高いバウンドで投手の頭を越えた。新人遊撃手のジェレミー・ペーニャが素早い動きでさばき、間一髪一塁でアウトにしている。その試合、バルデスは15打者を連続で打ち取るなど、 7回途中まで2安打無失点で大谷に投げ勝っている。
「今季は今まで以上にゾーンを攻めてカウントで有利に立っていきたい」と言う。ベテランのアレックス・ブレグマン三塁手は「どんどんゴロを打たせるからフラムバーの後ろで守るのは楽しい」と話す。
その後は2試合乱調だったが、4試合目から安定。6試合連続クォリティースタートで4勝2敗、防御率2.83の成績である。ピッチングの軸は全投球の51パーセントを占めるシンカー。速度は92マイルから97マイルと幅があり鋭く沈む。打球角度は平均でマイナス6度。11パーセントのチェンジアップも89マイルから93マイルで、ほぼ同じ回転軸で、少し遅くて、より沈む。打球角度はマイナス13度。両方フェード気味に落ちていく。
それと反対向きに落ちるのが26パーセントのカーブ。77マイルから82マイルで大きく縦に割れ、空振りを取るが、ゴロにもなる。7パーセント、82マイルから85マイルのカッターも横にというよりは縦に動き、打球角度はマイナス7度である。
この4つの球種をテンポよくゾーンに投げ込み、ゴロの山を築いていく。フォーシームはたったの5パーセントだ。バルデスはドミニカ共和国出身。身長180センチと背は高くない。15年、21歳でアストロズと契約し、18年にメジャー・デビューした。20年の短縮シーズンでは11試合に登板、チーム最多の70回2/3を投げ、5勝3敗、防御率3.57。プレーオフでも4試合に登板した。
21年、春のキャンプ中、打球処理で指を痛め、2カ月も出遅れ。それでも22試合に先発し11勝6敗、防御率3.14。プレーオフはワールド・シリーズ含め5試合に先発し活躍した。過去2年間度々大舞台を経験し、すでにMLBのトップ投手の仲間入りをしたと見なしていいと思う。その上で今季はさらにレベルアップしている。
本人はその理由をドミニカ共和国のスポーツ心理学者の指導を受けたからだと明かす。「ヒットを打たれても、野手のエラーがあっても、集中力を失わない。落ち着いて打者に攻めていく。それができる呼吸法を実践している」。バックも盛り立てる。実はアストロズの守備防御点は24点と30球団でトップだ。
ペーニャら優秀な野手陣が平均的守備に比べて24点も失点を防いでいる。アストロズは今季、打撃が少し落ちたかもしれないが、投手力と守備力で勝ち星を積み重ねている。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images