江夏は先発、江川は2番手

84年の江川
この2022年は
ロッテの
佐々木朗希による完全試合を皮切りに、すでにノーヒットノーランが4度。投手の快挙が続いている。来たるオールスターでも、投手たちによる“何か”が見られるかもしれない。
完全試合やノーヒットノーランは1人の投手によるものだ。これまでのオールスターで1投手が成し遂げた快挙といえば、1971年の第1戦(西宮)でセ・リーグの
江夏豊(
阪神)が達成した9連続奪三振、そして84年の第3戦(ナゴヤ)で同じくセ・リーグの
江川卓(
巨人)が見せた8連続奪三振だろう。オールスターは規定により投手は3イニングまでしか投げられないため、この2022年に見られる可能性がある1投手の快挙は、このあたりの再現になるのではないか。これから数回にわたって、この両雄が見せた真夏の奪三振ショーを、対戦した打者の姿とともに振り返っていきたい。
江夏は第1戦の先発、いわば“開幕投手”だった。パ・リーグの一番打者は
有藤通世(ロッテ)。初球はボール、2球目はファウル、3球目がボールで、4球目がファウルとなって2ボール2ストライク。ここから江夏はカーブを投じて空振り三振に仕留めた。この時点では、単に先頭打者が空振り三振に倒れたに過ぎない。よくある光景だ。ただ、江夏の心中は違っていた。ペナントレースは不振に苦しんでいた江夏。試合を前に知人から「よくこんな数字で(球宴に)出てきたな」と挑発され、そこに激励を感じた江夏は、「アウトを全部、三振で取ってやる」と意気込んでいたという。
一方の江川は
郭源治(
中日)に続く2番手として4回表から登板。もちろん郭が打ち込まれて降板したわけではなく、3イニングを投げ切った郭の後を受けたもので、一般的な中継ぎ登板とは意味が異なるものだ。珍しいことだが、この試合はオールスターの運営委員会と中日球団がスポンサー名の放送について衝突したことでホームラン賞はなし。場外で出鼻をくじかれたような試合だったが、江川の快投によって試合は興奮に包まれることになる。1人目の打者は
福本豊(阪急。現在の
オリックス)だった。
<次回に続く>
文=犬企画マンホール 写真=BBM