リーグ戦開幕に向けて

東洋大の155キロ左腕・細野は2023年のドラフト上位候補に挙がる
NPBスカウトは「ドラフト対象選手」のどの部分を視察するのか。時期によってその視点は変わってくるが、調整段階の3月上旬はあくまでも「確認の場」である。
東洋大の155キロ左腕・
細野晴希(4年・東亜学園高)は3月2日、上武大とのオープン戦(上武大球場)で、2023年の対外試合初登板。先発して3回4安打4失点で、敗戦投手(試合は上武大が8対6で勝利)となった。
味方が1回表に幸先よく2点を先制するも、その裏、先頭から死球、四球で制球を乱すなどして、3失点と逆転を許した。
「井上(大)監督からは『お前が全部、この試合を壊した』と言われました。風の強い日に投げるのは初めてで、対応できなかった。良い経験になりました。悪いこともありましたが、良いこともあったので、前向きにとらえていきたい」
この日の最速は147キロ。指にかかったボールには伸び、変化球もキレがあった。左投手特有の対右打者への内角のストレートと、昨年12月に就任した
乾真大コーチ(元
日本ハムほか)と改良を重ねてきたカットボールにも手応えを得たという。
「昨年からの課題である四球を、修正していかないといけない。リーグ戦開幕(4月4日、東都二部リーグ)まで1カ月。焦らず、ゆっくりとコンディションを上げていきたい」
長い目で見るスカウト
細野は大学入学から着実に成長を遂げ、3年秋の時点で「ドラフト上位候補」として、一つの評価を得ている。だからこそ、視察したスカウトも長い目で見ている。
「体は筋量が増えた気がします。この(強風の)中で147キロを出せれば十分。変化球の精度も上がってきていると思います。これから長いイニングを投げていくでしょうから、最初にしては順調です」(
ソフトバンク・宮田善久関東統括スカウト)
「左投手で、レベルの高いことは分っている。どこの球団も、左は何人いてもいいと思います。二部の開幕が(視察の本格)スタート。どのレベルまで上がってくるか。1年間、見ていきたい」(
広島・
高山健一スカウト)
「技術を評価する段階ではない。真っすぐのスピード、一つひとつの変化球も良いものを持っている。今日は元気にマウンドに立っている姿が見られただけで収穫です」(
阪神・
吉野誠スカウト)
東洋大は東都二部に在籍している。今春は二部優勝を遂げ、一部6位校との入れ替え戦で一部に復帰することが最大のテーマだ。言うまでもなく、キーマンはサウスポー・細野。ドラフト戦線においても、有力候補の一人であり、目が離せない2023年春となりそうだ。
文=岡本朋祐 写真=矢野寿明