増すばかりの存在感

今季は攻守に冴え渡っている坂本
阪神の正捕手争いで、変化が起きている。
岡田彰布監督は開幕前に
梅野隆太郎を正捕手で起用する方針を示していたが、「二番手捕手」の
坂本誠志郎の活躍が目覚ましい。
坂本は今季9試合で先発マスクをかぶり、チームは全勝。その内容も大きな価値がある。昨オフに現役ドラフトで
ソフトバンクから移籍した
大竹耕太郎、一軍で昨季まで未勝利だった
村上頌樹と「先発ローテションの谷間」と位置付けられていた投手を好リードで引っ張る。左肩違和感から4月下旬に復帰した
伊藤将司を含めた3投手とバッテリーを組み、22日の
中日戦(バンテリン)から4試合連続完封勝利を含む39イニング連続無失点。エースの
青柳晃洋、
西勇輝が共に1勝のみと調子が上がって来ない中、大竹が4試合登板で4勝、村上も4試合登板で2勝を挙げ、25イニング連続無失点と抜群の安定感を誇る。
縁の下の力持ちとして支える坂本の存在感は増すばかりだ。守備だけではない。課題の打撃でも、スタメン出場した今月4日の中日戦(甲子園)で、2点ビハインドの7回二死三塁で
柳裕也から中前適時打を放ち、逆転勝利の突破口に。11試合登板で打率.355、得点圏打率.455と下位打線の核になっている。
大胆な起用法も……

打撃の調子が上がってこない梅野
一方、梅野は打撃の状態が上がってこない。19試合でスタメンマスクをかぶり、打率.095と試行錯誤が続いている。開幕から七番を打っていたが、4月26日の
巨人戦(甲子園)では二番に抜擢された。岡田監督の大胆な起用法に球場がどよめいたが、4打数無安打と結果を残せなかった。
もちろん、梅野はチームに必要不可欠な扇の要だ。2014年は出場試合数が規定に達した選手で唯一の捕逸0をマーク。18年から3年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得し、19年には捕手でNPB歴代最高の123補殺を記録した。21年の東京五輪では侍ジャパンに選出され、金メダル獲得に貢献。勝負強い打撃にも定評があった。ただ、近年は阪神で「不動の捕手」とは言えない。
矢野燿大監督は21年に坂本をスタメンで積極的に起用。昨年も梅野が80試合、坂本が50試合で先発マスクをかぶった。
岡田監督が気になっていたポジション
岡田監督は野球評論家だった昨年1月、正捕手について週刊ベースボールのコラムで以下のように綴っている。
「監督の判断という点においては、ひとつ気になるポジションがある。そう、捕手である。順当なら残留を決めた梅野(隆太郎)がレギュラー捕手ということになるわけだが、そうは簡単に収まりそうにない。実は昨年の終盤の起用法が、気になって仕方なかった。2021年の優勝争いのクライマックスで、捕手を梅野から坂本(誠志郎)に代えた。とにかく勝負の局面での変化やった。なぜ梅野ではなく坂本だったのか? そこには使う側の考えがあるわけよ」
「梅野への不満? 坂本への期待感?いずれにしても、この起用法は当然、22年シーズンに持ち越されることになる。もし梅野を再度、レギュラーとして使い切るなら、どうして昨年の終盤に外したのか。つじつまが合わなくなってしまう。起用された坂本もそうだ。当たり前のように22年シーズンの布石と考えるだろうし、これでまた控えに回るようなら、何だったんだということになる。いずれにしても年をまたいで、ポイントになる捕手の起用法。ここもうまく解決していかねばならぬ問題である」
スポーツ紙記者は、「梅野は正捕手で支え続けた経験値がある。でも、坂本が攻守で出色の活躍を見せている。2人がハイレベルな競争を繰り広げれば、チーム力も上がります。梅野にも意地がある。調子を上げてもらわなければ困る選手です」と期待を込める。
梅野と坂本。正捕手争いの行方は――。
写真=BBM