まさかの演奏にスタンドからは手拍子

クラーク国際のアルプス席では、同じ学校法人のIPU環太平洋大が応援に駆けつけた[写真=宮原和也]
アルプス席のファインプレーがスタンドにいるすべての人を笑顔にした。
大会8日目第3試合(8月13日)、クラーク国際(北北海道)と花巻東(岩手)の2回戦は8回表の途中に激しい雨が降り一時中断。
傘なしではとても歩けないような強い雨が降り続く中、三塁アルプス席の一角に陣取った水色のシャツを着た集団だけは、その場から動かない。雨にひるむどころかむしろ全員ノリノリで高校野球ファンにはお馴染みの「サウスポー」を演奏し始めた。
まさかの演奏にスタンドからは自然と手拍子が沸き起こり、三塁アルプス席からは「サウスポー」に続いて「キン肉マン」「銀河鉄道999」の音色が鳴り響く。
演奏していたのはIPU環太平洋大のマーチングバンド部。クラーク国際とは同じ学校法人であることから甲子園応援に駆けつけた。外で演奏演技するマーチングバンド部にとって、天候の変化やアクシデントはつきもの。
キャプテンを務める應武弘規は雨中の演奏について「お客様に喜んでいただくというのが僕たちの行動理念でもありますし、マーチングバンドの日本一を目指して日々活動していて、その中でもアクシデントや臨機応変な対応は求められる場面があるので『こういうときでも動じずに演奏できて良かったねぇ』ぐらいで終わった感じです」と、さらりと言ってのけた。
場内から沸き起こった手拍子や演奏後の拍手については「すごくうれしかったですね。見ていただいたお客さんの中で記憶に残り続ける団体になることが大事だと思っているんですけど、今回の演奏は大きな影響を与えるきっかけになったと思いますし、何より目の前にいる方たちが喜んでいることを感じられたのでこの活動をやっていて良かったなとあらためて思う機会になりました」。
クラーク国際・佐々木啓司監督も「バックネット裏の皆さんが拍手しているのは見えますからあれはうれしかったですね。これから試合が続くのかなという中で我々も勇気をもらえましたし、観客の皆さんにも日本一力を持っているブラスバンドの音を聞いていただいたということは誇りに思いますよ」と、うれしそうに話した。試合は1対2で惜敗したが、甲子園に足跡を残したクラーク国際。
公式スコア備考欄の「降雨のため1時間34分中断」の横に、書き足したくなるような至極の数分間だった。
文=小中翔太