ハイレベルなチーム内競争

先発ローテーションに完全定着することを目指す西純
阪神が強い。8月13日の
ヤクルト戦(京セラドーム)で5対3と快勝し、2007年以来16年ぶりの10連勝。貯金を今季最多の24に増やし、2位の
広島に8ゲーム差と独走態勢に入っている。
快進撃を支えるのが安定感抜群の投手陣だ。今季は
青柳晃洋、
西勇輝が本来の投球ができずに苦しんでいるが、大卒3年目右腕の
村上頌樹、昨オフに現役ドラフトで
ソフトバンクから移籍した
大竹耕太郎がブレークするなど新たな力が台頭。
才木浩人、
伊藤将司もきっちり試合を作っている。さらに、救援から配置転換された
ジェレミー・ビーズリーもパフォーマンスが上がり、チーム内でハイレベルな競争が繰り広げられている。
そして、先発ローテーション定着目指すこの右腕も、好投を続けている。高卒4年目右腕の
西純矢だ。昨年は14試合登板で6勝3敗、防御率2.68をマーク。150キロを超える直球、スライダー、フォークを織り交ぜる力強い投球はスケールの大きさを感じさせた。投手だけでなく、打撃センスも目を見張るものがある。5月18日のヤクルト戦(神宮)で球団史上15年ぶりとなる「八番・投手」として出場し、侍ジャパン左腕の
高橋奎二からプロ初本塁打を放った。投げても6安打1失点でプロ初完投勝利をマーク。SNS上では「虎の
大谷翔平」と形容された。
「9人目の野手」として躍動
他球団のスカウトは「創志学園高のときから、投手だけでなく打者としての評価も高かった。U-18日本代表でも主軸を打っていますし、タイミングの取り方が抜群にいい。野手としてプロで勝負していても一流になれる素材。クリーンアップを打てると思っているので、打撃での活躍を見ても驚きはないですね」と評価する。
今季は春先に制球が定まらず救援に配置転換されたが、6月下旬以降は再び先発に回り、安定した投球を見せている。今月8日の
巨人戦(東京ドーム)では2本の2ランを浴びて6回4失点と反省点を残したが、打撃で価値ある一打を放った。2点リードの3回、二死一、三塁で1ボール2ストライクと追い込まれたが、
菅野智之の141キロのカットボールを中前に運ぶ3点目の適時打。この時点で得点圏打率は12打数5安打で打率.417。NPBの投手で最多の5打点を叩き出し、「9人目の野手」として相手バッテリーに脅威を与えている。
佐々木朗を参考にして
佐々木朗希(
ロッテ)、
奥川恭伸(ヤクルト)、
及川雅貴(阪神)と共に「高校BIG4」と形容された。同学年の投手たちの活躍は大きな刺激になっている。昨年5月に週刊ベースボールのインタビューで、「朗希のボールはえぐいので、次元が違うと思うのですが……アイツはどんな状況でもバンバン、ストライクを投げていきますよね(笑)。つまり積極的にストライクゾーンを通していくスタイル。そうすることで打者に考えるスキを与えていないんじゃないかな、と思って見ています」と語った。
さらに「僕自身も朗希のように、どんどんストライクゾーンに投げ込んでいけばいいのかなと思うようになりました。それに打者が積極的に打ちにきてくれるので、球数も抑えられて長いイニングを投げられるかなと。そういうところも朗希のピッチングを見て、勉強になりましたね」と佐々木朗の投球スタイルを参考にしていることを明かしていた。
投打で躍動する姿は、現役時代に巨人のエースとして通算173勝をマークした
桑田真澄(現巨人ファーム総監督)を彷彿とさせる。今季5勝2敗、防御率3.44。持っている能力の高さを考えれば、まだまだ物足りない。阪神が「投手王国」を作る上で、中心として稼働しなければいけない右腕だ。
写真=BBM