「過信にしてはいけない」
富士大の三番・麦谷は1点差へと迫るソロ本塁打を放った[写真=矢野寿明]
[明治神宮大会大学の部・準決勝]
11月19日(神宮)
青学大4-3富士大
これは、本物である。
富士大の「三番・中堅」の麦谷祐介(3年・大崎中央高)は2点を追う8回表、先頭打者で左越えソロを放った。青学大の先発・
常廣羽也斗(4年・大分舞鶴高)の146キロのストレートを強振。左打席から逆方向への一発は、当時、近大の2年生だった
佐藤輝明(
阪神)を彷彿とさせる圧巻の弾道だった。
麦谷は今年6月の全日本大学選手権準決勝では、青学大の右腕・
下村海翔(4年・九州国際大付高)の144キロストレートを左翼席へ運んでいる(ソロ本塁打)。
しかし、全日本大学選手権、明治神宮大会とも同じ相手に惜敗した。豪快な本塁打も勝利に結びつかず、麦谷は「ベスト4に進出したうれしさよりも、準決勝で負けた悔しさを胸に夏場は練習を重ねてきました。リベンジしようとここに来て、初戦(2回戦)は上武大さんに全員で勝ち上がってきた。今回も青学大に勝ち切れなかったのは悔しい。ただ、春の日本一チームに3年生以下のチームでも戦えたのは、来年につながる」と、前を向いた。
下村は阪神1位、常廣は
広島1位。2023年の大学球界を代表する投手から放ったオーバーフェンスについて、こう言及した。
「どんな投手が来ても、自分としては、打ちにいくだけ。お2人から打てたことは自信になりますが、過信にしてはいけない。ベスト4の壁を乗り越えられるように、チームを作り直します。練習から(22学年上の)金村さん(
金村尚真、
日本ハム)との対戦で(速球を)見てきましたが、やはり、素晴らしいピッチャー。ドライチだな、と思いました」
大崎中央高時代は、高校通算8本塁打。同校監督が富士大出身であった縁で、同大学へ進学した。入学時から10キロ増の80キロ。栄養学も率先して学び、フィジカル強化が、技術力アップにつながった。
「プロを目指しています。足と肩には自信がある。打撃も、左方向に強い打球が打てる部分をアピールポイントとしてやっていきたい」
プレーはもちろんのこと、安田慎太郎監督からは最上級生としての自覚が求められている。
「後輩たちはいつも、自分の姿を見ている。一つひとつの言動も気を使っていきたい」
名実ともチームリーダーとなる最終学年、悲願の大学日本一の先には、プロの扉が開くと信じて、日々の練習にまい進していく。
文=岡本朋祐