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【高校野球】最後まで模索…高校通算62本塁打の早実・宇野真仁朗は木製バットで勝負

 

プロのスカウトも注目の存在


新基準の金属バットではなく、木製バットを手に打席に入る[写真=BBM]


【第106回全国高校野球選手権西東京大会】
7月16日 スリーボンドスタジアム八王子
▽3回戦 早実6-4明大八王子
(延長10回タイブレーク)

 初戦(3回戦)を迎える1週間前まで、模索していた。「最後だからやはり、金属バットでいこうか……」。早実の主将・宇野真仁朗(3年)は木製バットと並行して、打撃練習を行った。高校通算62本塁打。右のスラッガーは最終調整に余念がなかった。

 今春から新基準の金属バットに完全移行。宇野は「木製のほうが、飛距離が出る」と、低反発の金属バットは使わず、春の東京大会では3試合連続本塁打を放った。このうちの1本を見届けたヤクルト吉田大成スカウトは「ポテンシャルがある。木製ですから評価がしやすい」と、将来性に惚れ込んだ。

 話はさかのぼる。

「昨秋の東京大会準決勝での本塁打(左越えのソロ)を見て『これは違うな』と思ったんです。守備も送球が良く、ハンドリングがしっかりしている。マイナスの要素が少ないんです。起用しやすいタイプかと思います。二塁、三塁、遊撃どこでもできる。(プロ志望届を提出すれば)高校生野手として、注目される存在になると思います」(吉田スカウト)。

 明大八王子高との3回戦には7球団9人のNPB関係者が「一番・遊撃」の宇野を視察。昨秋、今春は三塁手で背番号5だが、和泉監督が「しっくり来る」と、遊撃手だった高崎亘弘(3年)とポジションを入れ替えた。百戦錬磨の和泉監督は「優柔不断ですから」と苦笑いを浮かべながら「最後まで、さまざまな可能性にかけたい」との親心があった。

 そして、使用バットである。

「金属バットも試しましたがやはり、なかなか飛ばない。木製バットのほうが、飛距離が出る」。最終チェックの上で、本人の判断で今夏も木製バットで勝負することを決めた。

 高校野球はスプレーが使えない規約があるため、テープを巻いて滑らないようにした。握る際の感触が変わらないよう、デリケートな部分にまでこだわり、最後の夏に臨んだ。

初戦は5打数無安打


背番号5を着けるが、今夏は遊撃。1年時にも経験があるポジションであり、軽快な動きを見せていた[写真=BBM]


 主将。一番打者。誰の目に見ても、力んでいるのは明らかだった。5打数無安打。攻守の要であり、自身よりもチームのことが最優先である。「(夏は)負けたら、あとがない。そこの部分では心境は違う」と特別な感情を抱きながらも「打てないときでも声がけは最後の一瞬までできる。今のことだけを集中してやっていこう」と、前だけを見続けた。

 1点ビハインドの9回表、先頭での第5打席は中飛に倒れた。追い詰められた早実だったが、後続がつなぎ、土壇場で同点とした。4対4のまま延長に入り、早実は10回表に2点を勝ち越し、そのまま逃げ切った。

「3年間、一緒にやってきた仲間。信じていました。この展開で勝ち切れたのは、最高の初戦となりました」。ノーヒットの原因は分かっている。「体が流れていて、ポイントが近くなっている。開きが早くなっている」。動画を見て修正を重ねて、4回戦には万全の状態に持ってくる。

 早実は2015年以来、夏の甲子園出場から遠ざかる。「強い早実を復活させる。一戦一戦、全員野球で甲子園に出るのが目標です」(宇野主将)。2024年のチームスローガンは「頂戦 この一瞬にすべてを懸ける」。3年生12人で決めた約束事を上級生が体現し、下級生をけん引していく。

文=岡本朋祐
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