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【首都大学リポート】打率.438で首位打者の東海大・大松柾貴 ヤクルトコーチの叔父に「『やりました』って報告したい」

 

助監督に教えを乞うて打撃開眼


東海大・大松は首位打者を獲得した[写真=大平明]


【10月26日】首都大学一部リーグ戦
帝京大8−4東海大(帝京大2勝1敗)

 首都大学リーグ第8週1日目。今季のリーグ最終戦で東海大は帝京大と対戦。勝ったチームが関東大会への出場権を得る大事な一戦とだったが東海大は序盤から失点を重ね、7点を追う厳しい展開。それでも中盤までに4点を返したが反撃も実らず、4対8で敗れて東海大は5位。そして、帝京大が3位に滑り込み、明治神宮大会への道をつないだ。

 これで秋季リーグの日程が終了し、タイトルが確定。首位打者となったのは打率.438(32打数14安打)をマークした大松柾貴(4年・東海大甲府高)だった。好成績を収めるきっかけとなったのは田中大次郎助監督に教えを乞うたことだ。

「春季リーグはまったくダメだったので、大次郎(田中大次郎)さんに『打てる気がしないので教えてください』とお願いをして、一から指導していただきました。そして、チームとして逆方向を狙って打っていくことがテーマだったので自分も右方向を意識していたのですが、軸足になる右足のかかとが上がってしまう悪いクセを直したことで体の開きが抑えられ、夏のオープン戦はかなり良い感覚で打つことができました」

 今秋の開幕戦となった筑波大1回戦でスタメンに起用されるといきなり3安打。その後もコンスタントにヒットを記録し、第4週の日体大1回戦では先日のドラフト会議でオリックスから2位指名を受けた日体大・寺西成騎(4年・星稜高)から2安打。特に2打席目は「セカンドを越えるライト前ヒットを積み重ねていきたいと考えてプレーしているのですが、理想に近いヒットでした」と自身も満足する右前打。第4週を終えた時点では打率が5割を超える好調ぶりでリーグの打率十傑でトップに立ち、プレッシャーも感じたというが「(田中)大次郎さんに『やることをやったら、結果が付いてくる』と声を掛けていただきました」と激励を受け、その後も高打率をキープした。

 この日の帝京大3回戦でも5回裏の第3打席に二死一、三塁のチャンスで打席に立つと「狙いどおりにセカンドの後ろへ打てました」とライトへはじき返す適時打。また、第2打席は二死満塁から押し出しの四球を選んでいるが、今季は四死球の数も大幅に増やしている。

「逆方向を狙っている分、打つポイントが近くなってボールを見る時間が長くなり、フォアボールが多くなったんだと思います」

卒業後は社会人でプレー


 大松の叔父はロッテなどで活躍し、現在はヤクルトで打撃チーフコーチを務めている大松尚逸氏。最近はあまり連絡をとっていなかったというが「叔父さんは大学時代に首位打者のタイトルを取っていないので、『やりました』って報告したいと思います」と話す。また、両親には「ここまで野球をやらせてくれたことへの恩返しになったと思います」と感謝の言葉を述べた。

 この試合が大学でのラストゲームとなった大松。リーグ戦の初出場は2年秋だったが、実は「その直前の夏には野球をあきらめて公務員の勉強を始めていました」という。だが、当時の井尻陽久監督に積極性を買われて抜てきされると「最初は緊張で足が震えました」というが、いきなり3安打の鮮烈デビュー。桜美林大戦では「前の打席で真っすぐに差し込まれたのでストレートが来ると思っていました」と左中間へホームランも放った。

 昨夏も「秋季リーグに出られなかったら野球をやめる覚悟をしていました」というが、自身初の規定打席に到達した。このように何度も土壇場で踏ん張ってきた大松には支えてくれた言葉がある。

「井尻前監督の『本気でやってダメなら、それでいいじゃないか』という言葉を聞いて、自分のできるかぎり『やれるところまでやろう』と思いました」

 恩師の言葉を胸に、練習に取り組んできたことで道が開け、卒業後も社会人で野球を続けることが決まった。「関東大会に出場することができずに悔しいですが、社会人でやり返したい」と誓った大松。その野球人生は、まだこれから続いていく。

文=大平明
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