歴史的最下位に沈んだ昨季から巻き返しを目指し、編成部門や首脳陣を大きく入れ替えた西武が好調だ。球団は今季に向けてどのように再建計画を立て、実行に移しているのか。今年から編成トップを務める広池浩司球団本部長に聞いた。 われわれは何のために働いているのか

今季からチームを率いる西口監督
――昨季の西武は49勝91敗3分け、勝率.350と低迷し、
渡辺久信GMが退任。今季から広池さんが球団本部長に就任し、パ・リーグのAクラスにつけています。球団再建にはどのようなことが必要と考えて、実行に移していますか。
広池 まず、昨季は副本部長として渡辺元GMを支えきれなかったと悔やんでいます。その立場で申し上げることに一端の迷いがありますが、現在の立場で申し上げると、近年、野球チームとしてやるべきことができていないという点に尽きると思います。一言で言うと「凡事徹底」。選手は選手でやるべきことがあるし、コーチやスタッフはそれぞれやることがあると思います。昨年に限らず、長くチームに伝えてきた言葉ですが、浸透できていなかったんだと感じました。そこを改めて見つめ直して出発することが、あれだけマイナスを積んでしまったチームがまずゼロに戻るためには大事なことだと考えてチーム内で発信を続けましたし、改めて徹底してやっていきます。
――球団のやるべきこととは?
広池 「われわれは何のために働いているのですか?」というところをもう1回しっかり考え直すことです。突き詰めたら自分のため、自分の家族の幸せのためになりますが、その一歩手前のところですね。われわれスタッフは自分の“何か”を実現するためだけではなく、チームを強くするため、選手のために働いています。そのために「今、自分は何をやっているか」を考える。そこが選手やチームにつながってないものは、見つめ直そうという話をしました。
――以前は必ずしもチームや選手のためになっていない部分もありましたか。
広池 どの組織でもあることだと思いますが、特にチームが負けていくと、なんとなく自分が良ければいいという雰囲気になってしまうこともあります。私の今までの経験で言うと、勝つと自然にうまくいく部分もある。そこが野球の難しいところですね。勝つときも負けるときもあるので。だから、独りよがりにならないようにという話をしました。
――選手側にはどういう話をしましたか。
広池 選手側には私から直接伝えるのではなく、監督、コーチ、スタッフを通じて同じことを伝えました。例えば、最後までしっかり走るとか。練習のときに、試合のシビアな場面での1球のための練習ができているか。サインミスは絶対しないとか。そういったところのオーダーを、コーチ、スタッフを通じて話をさせていただきました。
――そういうことを言えるコーチを連れてくるのが、チームを作り直す上で最初に打った手ですか。
広池 そうですね。あれだけ負けを積み上げてしまったチームなので、雰囲気や、やるべきことを変えていかなければいけないと私も感じていました。凡事徹底、やるべきことをとことんやり抜くのにふさわしい方を考えました。
プロ野球チームのシートノック
――今季一軍のコーチとして着任した
鳥越裕介さん、
仁志敏久さん、
大引啓次さんはいずれも球団OBではありません。過去の西武で、コーチ陣にこれだけ外部から招いたケースはあまりなかったと思います。
広池 必要なところに必要なコーチという、私なりの考えでそうさせていただきました。
――鳥越ヘッドコーチは「朝起きた瞬間から、準備は始まっている」と話していました。新たなコーチたちを招いて春季キャンプから本格的に取り組み、チームは変わってきましたか。
広池 特に野手ですね。試合前に「打回り」という練習でのチームバッティングや、守備が一番わかりやすいです。私もビジターで時々ジャージを着てファーストを守りますが、特に内野手が受けるノックの数が全然違います。しかも1つのポジションではなく、セカンドで受けたと思ったら次はサード、その次はショートに行き、しかも1球1球、かなり集中してノックを受けています。私も時々ファーストを守っていて、かなり鋭い送球が来るので油断できない。それだけの人数がいろんなポジションで密度高くノックを受けるので、休む暇がない。1時間ずっと送球を受けっぱなしとか。「あっ、ここは一番変わったな」と思いましたね。
――キャンプ中に変化を感じたのですか。
広池 キャンプ終わりで対外試合が始まった頃ですね。2月下旬くらいに一軍のシートノックを見たときに、1球1球にチャージをしっかりかけて、全力で送球して、声を出して、リズムよく、というのが徹底されていました。「本当に素晴らしい。プロ野球のチームのシートノックだな」って、一旦手応えを感じた部分はあります。少し変わり始めたかなと。
――その辺は鳥越コーチを筆頭に徹底されたのですか。
広池 西口監督、鳥越さんの力がやっぱり大きいのかなと思いますね。
野球を通じて人と人をつなぐ
――開幕直前、大引コーチは「
日本ハムでは選手同士で注意し合うことがよくあったが、西武にはそういうことがなくて驚いた」というような話をしていました。今はコーチから言われているかもしれないけど、選手同士で言い合うようになるとチームの文化になっていくのでしょうか。
広池 本来はコーチに言われるのではなく、選手同士で指摘し合えるのが本当の強いチームです。そこは今後の課題だし、だんだん植え付けられていくと思います。最初はコーチに言われていることかもしれないけど、だんだんそれが当たり前になったときに、そうやってできていない人が目立つようになり、それに対して周りから自然と声が飛ぶのが、今後はいい形なのかなと思います。
――球団の再建計画はどのくらいのスパンで立てていますか。
広池 毎年優勝、日本一を目指さないチームはないと思います。そのとき、その年でベストを尽くし、勝ちにいくことは絶対必要なので。悠長なこと、何年後とは言っていられないと思います。
その上で思ったのは、去年だけではなく、その前も含めてライオンズファンの皆さまに非常に我慢をさせてしまっている。たくさん球場に足を運んでいただいているのに、見せ場のない試合もありました。「われわれの仕事って何?」と考えた時に、究極を言えば、勝つことだけじゃないと思います。
――というと?
広池 われわれの存在意義は、野球を通じて人と人をつなぐこと。野球の話題で世代を超えて「ライオンズ、こうじゃないか」「そうだね」みたいな感じで会話が生まれて人がつながって、笑顔になり、活力になる。そういったところがわれわれの存在意義だと思います。私も昨年のオフ、いろんな方に会うたびに「ライオンズ、大丈夫なのか?」と言われるなど、マイナスの話題で人をつないでしまっているところがありました。
だからまず、特にライオンズファンの皆さまに笑顔になってもらう。それは何年計画というより、毎日、今日の試合に来ていただいた方に笑顔になってもらう。今までの分も、という思いで毎日みんな過ごしています。その積み重ねが何年後かに、本当に強いチームになっているかもしれない。12球団の中で一番ファンの皆さまに満足してもらえるチームになっているのが理想かなと思っています。
取材・文=中島大輔 写真=BBM