強かった今年に期する思い

移籍2年目の今季、攻守走で躍動している上林
普段はクールな男が夢の舞台で、笑顔を絶やさなかった。2度目の球宴出場となった
中日・
上林誠知が攻守で躍動した。代打で途中出場した第1戦で8回から中堅の守備に入ると、
清宮幸太郎(
日本ハム)が放った中前に落ちるかという打球を華麗にスライディングキャッチして好捕。「まだ、オールスターでヒット打ったことないので打ちたい」と掲げていた目標も達成した。第2戦は「一番・中堅」でスタメン出場すると、初回の先頭打者で全パの先発・
今井達也(
西武)の外角直球をとらえ三塁内野安打で出塁。さらに、二番・
吉川尚輝(
巨人)の初球で二盗に成功した。
球宴出場は
ソフトバンク時代の2017年以来8年ぶり。初出場した当時は21歳で若手のホープとして将来が嘱望されたが、その後は度重なる故障で一軍出場が減った。23年限りで戦力構想から外れ、ソフトバンクを退団。救いの手を差し伸べてくれた中日に移籍した。昨年は46試合出場で打率.191、1本塁打、3打点。期待に応えられず、今年に期する思いは強かった。
上林は球宴に特別な思いがあった。子どものころから過去の球宴の名場面を動画サイトで繰り返し見てきた。特に印象的な場面がある。1997年に西武時代の
松井稼頭央が1試合4盗塁を決めた場面と、99年に
オリックス時代の
イチローが巨人・
上原浩治から放ったバックスクリーンに運んだアーチだ。「絶対に(球宴に)選ばれたいです。とにかく、どういう形でもいい。ファン投票で僕に入れてくださる方は本当に感謝です。ファンの方が手間をかけてくださるのが、期待の表れだと思っています」と語っていた。ファン投票では外野手部門で4位だったが、選手間投票で選出。前半戦で86試合出場し、打率.263、11本塁打、32打点の活躍が評価された。
インパクトの強い打席
他球団の選手たちから「天才打者ですよ」と一目置かれる上林は、インパクトが強い打席が目立つ。5月16日の巨人戦(東京ドーム)では1点差を追いかける6回一死で相手先発・
赤星優志のカットボールを右翼席に叩き込む同点アーチ。さらに、8回二死の場面ではセットアッパー・
大勢の154キロ直球を左中間に勝ち越しソロを放った。試合は逆転負けを喫したが、1試合2発は19年7月8日の西武戦(東京ドーム)以来6年ぶりだった。
22年に右アキレス腱断裂の大ケガを負い、「医師からは(完治まで)2、3年かかると言われていました」と漏らしてから3年の月日が経った。今年はリーグ2位の19盗塁をマーク。足に不安がないから思い切ったスタートが切れる。盗塁成功率が82.6%と高いことも価値が高い。
毎年キャリアハイの目標
井上一樹監督は「レギュラーを狙うところから、ここまで来た。ちょっとくらい打てないときがあったとしても、上林を簡単に外す選択肢はもうない」と信頼を口にする。ソフトバンク時代の18年に全143試合出場で打率.270、22本塁打、62打点、13盗塁をマーク。ただ、この数字を追い求めるわけではない。
「毎年、キャリアハイというのは目指しています。ずっと試合に出ることができれば、今年はそれができる自信があります。シーズンを通して出場するということは長くやっていないので、その流れをつかみたいというのもあります」と週刊ベースボールのインタビューで語った上で、シーズンを通して貫きたいことを聞かれると、以下のように語っている。
「今やっていることを変えないことじゃないですか。試合の出方にもよると思いますが、ずっと出ていればあまり変えることはないと思うんですけど、少しの出番やチャンスしかないときは、そのときの結果で左右されて疑心暗鬼になってしまうので、そこですよね。だからそこでも自信を持ち続けて変えないことが大事になってくると思っています」
チームとして大きな目標がある。前半戦を終え、2位・
DeNAに2.5ゲーム差の4位につけている。首位・
阪神の背中は遠いが、2位でCS進出は達成可能な目標だ。打って、走って、守って。後半戦も上林がグラウンドで躍動する。
写真=BBM