超攻撃的布陣

開幕試合で帝京高は安藤丈二をトップバッターで先発起用。「一番・指名打者、安藤君」と場内アナウンスされた[写真=牛島寿人]
第98回選抜高校野球大会が3月19日、
阪神甲子園球場で開幕した。
2026年センバツの大きな変化は「DH(指名打者)制度」の導入である。日本高野連は「新たな出場機会の創出」「投手の健康対策」を主な目的としているが、新ルールにより、戦略上の選択肢が増え、野球も大きく変わりそうである。大会初日の3試合を考察してみた。
開幕ゲームの第1試合。帝京高・金田優哉監督は「一番、良いバッターを持ってきました。一番、多く回りますから」と、投手もこなす安藤丈二(3年)を「一番・DH」に据えた。二番には早くも27年のドラフト候補に挙がる2年生・
目代龍之介。右打者2人はパワーヒッターで、WBCにおける侍ジャパンを思わせるような、超攻撃的な布陣で臨んだ。
安藤の結果は4打数無安打。試合後に「DHで初ヒットを打ちたいと思っていたんです。もっと冷静になっていれば、結果が残せたかも……」と悔やんだ。ベネズエラとのWBC準々決勝では
大谷翔平が「一番・DH」で先頭打者本塁打。安藤は「比べるのもおこがましいです」と苦笑いを浮かべつつも「自分も狙っていこうかとも思ったんですが、力んでしまいました」と明かした。チームは16年ぶりの初戦突破を遂げた。安藤は言う。
「ベンチでも、なるべくグラウンドの選手たちと同じ空間にいるつもりで、いつも以上に声を出すなど心がけました。DHでバッティングが買われている分、打席で結果を出さないといけない。一番なので、自分が出ないといけない責任感がある。目代と2人で1点と言われている。また次があるので、修正して挑みたいなと思います」
沖縄尚学高・比嘉公也監督は大型左腕・仁禮パスカルジュニア(3年)の先発も想定してか「長打があるわけではないが、当て勘がある」と、右打者で背番号20の上間悠智(2年)を六番で起用した(4打数無安打)。
第2試合は両校とも二ケタ背番号の選手が先発。中京大中京高は背番号19の七番・川石大空(2年)が2回裏に、DH初ヒットとなる右越え二塁打を放った。阿南光高は背番号10の六番・坂本翔太(2年)が起用され、2つの四球を選ぶ選球眼の良さを印象づけた(2打数無安打)。一般的に高校野球における背番号「10」は、控え投手で使用されるケースが多い。阿南光高ではDH導入が決定以降、背番号「10」は10人目のレギュラーを意味している。
「大谷ルール」が初適用
第3試合では、大きな動きがあった。まず、八戸学院光星高は先発投手が指名打者を兼任する「大谷ルール」が初めて適用される事例が発生。主将・北口晃大(3年)が「四番・投手兼DH」で先発し、延長10回を6失点で投げ切った。投手として降板後もラインアップに残れる一方で、再登板はできない。仲井宗基監督はアクシデントがない限り、完投と決めていたという。北口を上回る打者が現状いないチーム事情も背景にあった。ベンチは継投を視野に入れておらず、覚悟を決めたさい配。「大谷ルール」というよりも、エース・北口に対する全幅の信頼を示す起用だった。
対戦した崇徳高は対照的に先発・徳丸凛空(3年)がタイブレークの10回表途中で降板すると、DHを消滅させ、右翼の守備に就かせた。徳丸は二塁打を放っていたDH・大深琉(背番号9、3年)が入っていた八番、右翼・山根健裕(背番号17、2年)がいた九番に救援投手が入った。大深は打撃が買われての先発であり、山根はディフェンス力が売り。試合終盤のシフトチェンジを想定しての起用であったのだ。
徳丸は同イニング途中で再登板。DHは一度消滅すると復活はできないため、「八番・投手」で徳丸、「九番・投手」には代わりの右翼手が入った。だが、徳丸は相手打線の勢いを止めることができず、ベンチに下がっている。この回は計9失点で、崇徳高は6対15で敗退した。試合後、藤本誠監督は「徳丸がここまで打たれたのは初めて。素晴らしい打撃をされた」とエース左腕の大量失点は想定外だった。ゲームプランについては「DHについて勉強してきました。徳丸は打撃も良い。先発して、ベンチに下げることは考えていなかった。(再登板の)練習はしてきました」と、慌てることなく、準備してきたことを強調した。
主に起用が大きく変わる野手を軸に触れてきたが、投手サイドから見れば、自チームの攻撃中は、コンディションを整えられるメリットのほうが多い。「暑さがある夏になれば、さらに投手にとって、DHはありがたい」との声も聞かれた。一方で今大会、すでにDHを使用しない方針と公言しているチームもある。この新たなルールをどう有効活用していくのか。毎年のことではあるが、センバツはシーズンインしたばかりの公式戦初戦。3月の対外試合解禁以降、試してきてはいるものの、あくまでも練習試合であり、手探り感は否めない。どの学校も「入り」が難しいのだ。試行錯誤しながらも、選手をコントロールし、最終決断する監督のベンチワークがカギを握りそうだ。
取材・文=岡本朋祐