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広島・石原貴規インタビュー 次世代の「打てる捕手」へ 「方向の意識だけでなく、スイングに対する意識も、去年の後半から変えました」

 

昨年まで、「広島の捕手・石原」と言えば、石原慶幸を思い浮かべるファンは多かっただろう。しかし今季からは、この男だ。天理大から入団して2年目。昨季は一軍デビューはならなかったが、肩の良さが売りの守備に加え、打撃を磨いて、今季は開幕一軍を手にした。12球団でも有数の層の厚さを誇る、カープの捕手陣に斬り込んでいく。
取材・構成=藤本泰祐 写真=松村真行


「しっかり振る」を心掛け


 ルーキーシーズンの昨年は、キャンプは一軍で過ごしたが、シーズンでは一軍に呼ばれることはなかった。しかし今季は、昨年ファームでも打率.202だった打撃に磨きをかけてきた成果が出た。キャンプから右方向への強い当たりが出る打撃を披露、オープン戦でも打率.375と結果を残し、開幕一軍をゲットしたのだ。

──初めての開幕一軍をゲットしました。

石原 去年は1年間、上がることができなかったので、「ヨシ、やってやるぞ」という気持ちです。

──今年、一軍を手にできたというのは、昨年と比べてどこがよくなったからだと、ご自身では思われますか。

石原 キャッチャーとしての動きもありますが、やっぱり一番はバッティングかなと思います。去年の終盤から強いスイングがしっかりできるようになってきて、長打も増えてきましたし、確率も去年の前半より上がってきたので。そのあたりがアピールできているのかなと思います。

──キャンプからオープン戦と、右方向への強い当たりが目立っていました。

石原 引っ張って強い当たり、というのは、まあ当たり前ですけれども、逆方向にしっかり強い打球を打つ、というイメージで打席に入っていったほうが、体の開きもなくなり、確率も上がるはず、という考えはあります。方向の意識だけでなく、スイングに対する意識も変えました。去年は、最初、当てに行こうとしてしまって、強いスイングができていなかった。そこで、「しっかり振る」ということを心掛けて。それが去年の後半からは、試合の中でも感覚としてつかめてきたので、この春も継続してやりました。

──もともと、ライト方向に強い打球を打てるタイプではあったのでしょうか。

石原 いえ、逆方向に合わせる、ということはできましたが、強い打球、ロングヒットというのは逆方向にはほとんどなかったので、そこは去年とは変わったところかなと思います。今年のキャンプでは、ポイントを少し体の近くにイメージして、早めにタイミングを取って、しっかり振り切る、ということを心掛けてやってきましたので、それがオープン戦の結果につながったのかなと思います。

──3月17日のヤクルトとのオープン戦(神宮)では、石川雅規投手からライトへ3ランを打ちました。

石原 いつも「噛(か)んだ打球でバックスピン」というイメージで打っているのですが、試合の中でそういう打球が打てた。ということは、いい形で振れているということなので、良かったと思います。

──右へ打つか引っ張るかは、あらかじめイメージしているのでしょうか。

石原 いえ、狙って引っ張ったり、流したりしようとすると、僕の場合、ちょっと不器用なので、変な動きが入っちゃったり、スムーズに動かなかったりするので。基本はセンター中心に素直にはじき返すというイメージでいます。バッティングについては、この感じで、自分から崩れていかないようにしていければいいと思います。

3月17日、ヤクルトとのオープン戦[神宮]で石川雅規からライトへ3ラン。打撃への取り組みの成果が表れた一撃で、開幕一軍を引き寄せた[写真/山口高明]


後輩の入団も刺激に


 打撃を磨いて開幕一軍を手にした石原だが、そのポジションは捕手とあって、常時出場を目指すためには、やはり守備で信頼を得なければならない。セカンドへのスローイングについてはアマチュア時代から定評があったが、捕球、配球、そして司令塔としてチームを引っ張っていく姿勢など、守備面において一軍で経験を積んでいかなければいけない部分はまだまだありそうだ。

──さて、守備のほうですが、一番のアピールポイントは、やはりセカンドへの送球でしょうか。

石原 そうですね。守備面で一番アピールできるのはスローイングだと思うので、そこは強みにしていきたいですね。

──アマ時代から定評がありましたが、プロ入り後もさらに改良されたとか。

石原 下半身の蹴りを、アマチュア時代以上に意識してやっています。下半身の力をうまく伝えられれば、そこまで力を入れなくてもいい球が行きますので。上半身だけで投げていると、やはり肩、ヒジに負担がかかって疲れてくるので、1シーズンを通してやり切るという面でも、そこは大事になってくると思います。

──キャッチングやフレーミングについてはどうですか。

石原 そこまでうまいほうではないのかなと自分の中では思っています。キャッチングもそうですし、ブロッキングの速さも、まだ自分には足りないところだと思います。

──今、キャッチングに関して意識していることは。

石原 意識しているのは、しっかりボールの下から入って捕る、ということですね。それと、たまに上体でボールを追い掛けてしまうことがあるので、それがないように。きわきわ(ギリギリ)のボールで、体を寄せていかなければいけないとき以外は、基本的には、「目で追って、手で捕る」ということを心掛けています。

──配球面はどうでしょう。一軍のピッチャーと組むようになって、得たものはありますか。

石原 ファームのピッチャーも、そこまで違うということはないですけれども、やっぱり初球の入り方とか、ボールの使い方というのは、勉強になるところがあります。サイン交換の中で、首を振られて勉強になるところも多いです。ゲームの中では、今、課題としているのは、バッターの反応をしっかり見る、ということです。

キャッチングやブロッキング、また、配球を含めて投手をどう引っ張っていくか、という部分はまだまだ日々勉強だ[写真/毛受亮介]


──一軍の試合でマスクをかぶるのには慣れてきましたか。


石原 試合に出る中で、少しずつですけど、落ち着いてできるようになってきました。

──こちらの先入観もあるかもしれませんが、オープン戦で天理大の1年後輩の森浦大輔投手とバッテリーを組んだときは、すごくいい呼吸を感じました。

石原 大学のとき3年間組んでいたので、慣れているというか、自分の中でしっかり計算できるところがあるので、やりやすさはありますね。

──森浦投手の入団は、だいぶ刺激になっていますか。

石原 ポジションはもちろん違いますけど、森浦もキャンプからオープン戦といいピッチングを続けているので、その活躍に負けないように、自分もしっかりついていかなアカンな、という気持ちはあります。

──會澤翼捕手をはじめ、先輩のキャッチャーを近くで見られて、参考になる部分は。

石原 ミットの使い方もそうですし、ピッチャーを引っ張っていく仕草、声掛け、いろんな場面でのゼスチャーなども勉強になります。そこも自分の課題かなと思いますので、参考にさせてもらいながらやっています。

速くて正確なセカンドへのスローイングが一番の武器。この部分では會澤翼や坂倉将吾にも負けないものがある


──今年、目標としていきたいところは。

石原 まずは、一軍の戦力になりたいと思っています。具体的な数字というのは、まだ1年間やったことがないので、何とも言えないですけど、まずは1年間、しっかり一軍に帯同して、戦力になるということは、目標としていこうと思います。

──そのためには、カギになるのはバッティングだと。

石原 そう思います。もちろんキャッチャーなので、基本として守備はしっかりやりながら。ただ、打てないと試合には出られないと思うので、バッティングのほうもしっかり準備してやっていきたいですね。

──将来的に目指したい捕手像は、どんなものでしょうか。

石原 まず守備ありきの、プラス、バッティングということで。守備とバッティングをしっかり両立して1年間活躍できるキャッチャーというのがやっぱりベストだと思うので。1年間マスクをかぶり続けられる、打てるキャッチャーになりたいと思います。

──では将来的には、まさに今の會澤捕手のような存在に、ということですね。

石原 ハイ、そうですね。

──今シーズンは、ご自身でもどこまでやれるかというのが楽しみですか。

石原 去年はファームでも、ほとんどお客さんが入らない中でやっていましたので、そういった環境の違いがあったり、不安も多少ありながらですけれども、頑張っていきたいと思います。自分が現状どこまでできるかというのは、楽しみでもあります。

──では最後に、今季へ向けての意気込みをお願いします。

石原 後輩の森浦もいますし、負けないように。今、一軍にいるキャッチャー4人の中でも負けないようにして、一軍でしっかり結果を残していけるように、頑張っていきたいと思います。

 開幕3戦目の3月28日、中日戦(マツダ広島)で巡ってきたプロ初出場は、0対0の9回表の守備から。栗林良吏を必死にリードしてゼロに抑えると、その裏、二死一、二塁の一打サヨナラの場面で初打席、0─2からしっかり選んで四球で歩いた。會澤翼、坂倉将吾とそろう広島捕手陣ではなかなか出番は回ってこないが、しっかりとできる仕事をこなして、足場を固めていく。

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【21年のターゲット】1年間一軍帯同
【特殊能力】速く、正確なスローイング

編集部分析[5段階評価]


 地肩の強さを感じさせる中村奨成とはまたタイプが違うが、多少難しいコースのボールの捕球後も素早く正確に二塁に投げられるスローイングが最大の魅力だ(昨季、ファームでの盗塁阻止率は.355)。打撃でも力を伸ばしたことで一軍を手にしたが、打力で會澤翼や坂倉将吾の上を行くのは簡単なことではないだけに、次は一軍の中で実戦経験を積み、守備面でのベンチの信頼をいかに得られるかにかかってくるだろう。

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