週刊ベースボールONLINE

千賀滉大のピッチングバイブル

千賀滉大のマウンドでの立ち位置に対する考え方は?「基準を作ってプレートの真ん中に立つ」

  1

日本プロ野球界を代表するエース・千賀滉大による、初の著書『千賀滉大のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)が12月28日発売となる。常勝・ソフトバンクのエースとして君臨し、数々の金字塔を打ち立てた右腕が、出し惜しみなく投球術を語る――。最速164キロのストレートのメカニックや、“お化けフォーク”“スプリーム”といった変化球についても、メカニックを明かす。22年シーズン終了後に海外FA宣言をし、23年はMLBへ活躍の場を移す著者、渾身の一冊となっている。今回は、その著書の内容を一部紹介する。

もともとは三塁側に寄って立っていた


今季は11勝を挙げて7年連続2ケタ勝利をマークした千賀。来季はメジャーのマウンドに立つ


 僕はプロ3年目の2013年から2年間、中継ぎのポジションを経験しました。そのときに走者がいる場面でマウンドへ上がるケースが多く、またできるだけスムーズに肩を作ることの必要性も実感したため、「最初からセットポジションで投げたほうが良いんじゃないか」と考えるようになりました。そうすれば走者の有無にかかわらず、いつでも同じフォームで動きをシンプルにして投げることができます。したがって先発へ再転向した15年以降も引き続き、セットポジションから投げています。もちろん、これは人それぞれの感覚であって、ワインドアップやノーワインドアップのほうが投げやすいという人もいると思いますし、決して足を上げるまでの予備動作が無駄だというわけではありません。

 マウンド上での立ち位置ですが、僕はプレートのど真ん中を踏むようにしています。もともとは一番右(三塁側)に寄って投げていたのですが、その場合は対角にある右打者のアウトコースまでの距離が遠くなり、インコースまでの距離との差が大きくなってしまいます。これもやはり人それぞれの持ち味に合わせれば良いもので、ボールにより角度をつけて打ちにくくしたいという意図ならば、三塁側や一塁側に寄っておくのも有効だと思います。また、打者に応じて立ち位置を変えることで打ちにくくしたいという人もいるでしょう。ただ、単純に「自分をどう生かすか」ということだけを考えたら、同じ位置から投げたほうが安定はしやすい。さらに僕の場合はストレートとフォークが大きな武器で、左右の角度をつけたいタイプではありません。むしろ内外角になるべく差をつけず、両方へ投げやすくしたい。ですから「プレートのど真ん中に立つ」という考えに至りました。

 右足を置くときですが、僕はいったんつま先をプレートの三塁側の端に当て、そこから本塁方向へ蹴り出すようにしてスパイクの刃で縦線を描きます。そしてカカト側の刃で削れた跡に母指球を当ててプレートと平行に置くと、ちょうどプレートのど真ん中に右足をセッティングできます。以前のように三塁側の端から投げる場合はプレートを基準にできますが、真ん中というのは目安がない。だから、自分で線を引いて目印にするわけです。

マウンドでの立ち位置に関して実演する千賀


 いくら自分でど真ん中に立つことを意識していても、やはり基準がなければ右足の位置は投げていくうちに少しずつズレていってしまいます。まして土が掘れて穴ができれば、体はそちらの方向へどんどん傾いていくものです。また対戦相手のピッチャーが左投げだったらなおさらで、穴の掘られ方や場所が違うので、自分の立ち位置も余計にズレやすい。さらに同じ右投げでも、三塁側や一塁側から投げる人もいれば、真ん中でも微妙にズレている人もいるので、影響はあります。つまり自分が投げる位置を変えないためにも、目安を作っておくことが大事だということです。特にイニングの初めなどは必ず線を引くようにしています。

※CHAPTER.1<投球フォームのメカニクス> より抜粋

写真=BBM

『千賀滉大のピッチングバイブル』販売はコチラから

【本の主な内容】
●CHAPTER.1<投球フォームのメカニクス>
立ち位置/ラインの確認/立ち姿勢/足上げ/目線/ステップ時のプッシュ感/上体の捻り/テークバック/並進運動と回旋運動/ステップ足の使い方/上下のセパレーション/ボディーターン/リリース/フィニッシュ/歩幅と足跡

●CHAPTER.2 <千賀滉大の「思考」>
①「投げる」ということをもっと繊細に考える/②物事を教えないことの大切さ/③キャッチボールでの意識/④ブルペン投球での意識/⑤試合中のフォーム修正/⑥マウンドへの対応/⑦トレーニングの捉え方/⑧試合での投球/⑨1球の積み重ね方
[見直していきたい野球ワード] 体の開き、割れ、トップ、タメ、壁

●CHAPTER.3 <各球種の技術と試合への準備>
変化球の習得、各球種の握り ストレート(フォーシーム)/フォーク/スライダー/カットボール/スプリーム、試合に向けたコンディショニング、投球フォーム連続写真解説

この記事はいかがでしたか?

関連情報

みんなのコメント 0

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング