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セ新人王は戸郷やや有利。パはこのままいくと該当者なしかも【大島康徳の負くっか魂!!】

 

セ・リーグの新人王はいい争いになっていますが、チームが優勝しそうな分、戸郷[巨人]が少し有利な気がします


戸郷の投球回もカギに


 今週号は、特集のテーマに合わせて、両リーグで新人王争いをしている選手について、書いていきたいと思います。

 まずセ・リーグのほうは戸郷(戸郷翔征、巨人)と森下(森下暢仁広島)の両投手の、いい争いになっていますよね。新人王を獲(と)るためには、2ケタ勝利が必要になってくるでしょうけれども、今のところ、少し戸郷のほうが有利かな、という感じはしています。巨人がこのままいけば、「優勝に貢献した」ということになりますのでね。あとは投球回が規定回数に行くかどうか、というところでしょうか。そこがクリアできて、2ケタ勝利なら文句なしでしょう。去年はストレートとタテの変化が目立っていましたが、今年はそこにカットボールやスライダー系のボールも増えて、両サイドの幅もうまく使えるようになった印象があります。そのあたりのコントロールが、成長したところでしょう。故障をさせないで育てようということでしょうか、あまり完投とか、長いイニングは投げていませんが、規定投球回を目指すなら、今後はもう少しイニングを伸ばしていく形になる可能性もありますね。

 一方、森下も新人王に値する成績を残していますね。こちらはホントのルーキーでもあります。新人ながら自分の持ち味を十分に発揮しています。ただ、チームの調子がよくないですから、勝ち星とか、防御率、三振奪取率など、いろいろな成績で戸郷を上回っていかないといけないかなという感じはします。

 ホントに素晴らしい活躍だと思いますが、欲を言えば、ちょっと3ボールになるケースが多いような気がします。早く追い込んでもきわどいところに投げて、並行カウントとかフルカウントにしてしまう。それでも最終的には打ち取るんですけど、「だったら最初から抑えちゃえよ」みたいなね(笑)。その辺の慎重さがルーキーなのかもしれませんが、もうちょっと早い勝負をしていけば、もっと楽に投げられると思います。ここからが疲れの出てくる時期かと思いますが、ここを乗り切れば、新人王に届くかもしれません。

 続くのはヤクルトの清水(清水昇)ですか。球が速くて度胸もいい。いいポジションを与えられて、本領を発揮していると言えます。ただ、新人王ということを考えると、最多ホールドのタイトルを獲ったら浮上、という感じではないでしょうか。

 中日ロドリゲスも権利を持っているようですね。出だしの2、3試合は非常によかったですから、そのまま行ければ面白い存在でしたが、故障してしまいましたから、試合数、イニング数が足りないでしょう。新人王を考えると、ちょっともったいなかったですね。

 野手は、試合数、打席数から言って、投手の候補を抜くのは難しいでしょう。セ・リーグは、印象度から言っても、まず戸郷と森下のどちらかだと思いますけどね。

小深田の打率が上がれば


 パ・リーグは難しいですが、あるとすれば一番手は楽天の小深田(小深田大翔)でしょう。ショートに抜てきされて、頑張っています。守備がいいので監督も使いやすいでしょうね。あとはどこまで打率を上げられるか。規定打席まで行けるかは分かりませんが、過去にも到達せずに新人王になった選手はいますから。2割台後半、2割8分ぐらいまで打率を上げられれば可能性が出てきます。

 ロッテの安田(安田尚憲)もいますが、彼はやはりホームラン数と打率をもっと伸ばしてこないと、そんなに票は集められないのではないでしょうか。課題はいかに結果を恐れず、昨年、ファームで打席に立っていたときと同じような精神状態で臨めるかでしょう。打率が低くても、若くても、やはり四番ですから、相手ピッチャーはかなりの警戒で臨んでくるはずです。そこで甘い球だけを狙っていたのでは打てない。少々厳しい球でも、「空振りしてもいいや」ぐらいに割り切って、慎重になり過ぎずに迷いなく振れるかどうかでしょう。これは若い四番が必ず越えていかなければならないテーマですけれども、指導者どうこうでなく、自分自身で感じないとクリアできない部分ですからね。今のままだと、ちょっと新人王は難しいかなと思いますね。もし新人王を獲るところまで行ければ大きな自信になると思いますけれど。

 あとは走りのスペシャリストの和田(和田康士朗)ですか。あの足があるので注目度は高いですけどね。打席数や打率がどこまで行けるか。新人王を獲ろうと思ったら、まず盗塁王を獲ってはじめて、という感じではないでしょうか。

 ピッチャーでは、日本ハムの河野(河野竜生)もいますが、やはり先発投手は2ケタに近い勝ち星が挙がらないと新人王まではいかないですね。西武の平良(平良海馬)も、まだ権利があるということですが、チームが勝っていないので、去年に比べたらちょっと目立たないですね。

 こう考えていくと、パ・リーグの新人王は該当者なしになるような感じもしますね。タイトルがあるから、必ず誰かを当てはめて獲らせなければいけないということはないわけですからね。賞に値しない人を選ぶというのはこれまで獲った人にも失礼ですから。

 まあでも、選手のほうはチャンスがある以上、あきらめる必要はないので、試合数や打席数が少なくても印象に残る活躍をするとか、盗塁王を獲るとか、インパクトの強い選手になって、新人王を獲れるように頑張ってほしいですけれどね。該当者なしというのはやっぱり寂しいところがありますから。

 セ・リーグのほうは、まだまだこれからでしょう。2人の争いが楽しみです。

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