ナゴヤ球場で少々やらかした[?]有田打撃投手
打撃投手の難しさと怖さ
裏方さんの仕事の中で「打撃投手(バッティング・ピッチャー)」という職種がある。打撃練習にはなくてはならない存在で、気持ちよく打者に打たせるのが好ましいという仕事であり、僕が現役生活を終えて、まず球団から与えられた仕事でもあった。打撃投手は俗に「バッピ」または「BP」と呼ばれ、各球団の保有人数には差はあれど、今から35年ほど前の
巨人には5、6人の打撃投手が在籍していた(現在は十数名。12球団でトップクラスの数)。
BPは現役投手として力が落ち、もしくはその実力がプロのレベルに至らなかった投手が引退し、打撃投手になるケースがほとんどだが、練習で打者に気持ちよく打たれるだけなら、簡単で楽だなぁなどと読者の皆さんは思うかもしれない。これがまた簡単なようで簡単ではないのだ。1年だけしか経験していない、この打撃投手という仕事に就き、僕自身が経験したつらさ、また苦労などを思い出しながら綴ってみたいと思う。
BPはバッテリー間の正規の距離よりも少し打者に近いところからボールを投げるので、距離は短いし、打たれてナンボだから目いっぱい投げる必要もない、そりゃイージーだよねと言われそうだが、いやいや、そんなことはないのですよ。実は僕がフロント入りをしたこのときの肩書はチーム付きスコアラーだった。そして兼任としてBPもやるということになったのが経緯としては正しい。そして、そのときには心の片隅に、その何と言うか……、打撃投手を務めるようになったのは運命的なものがあったのかと感じていた。
あれは僕がプロ入りし、まもなくのときだったと思う。柚木秀夫さんという左の打撃投手の先輩にあいさつに行ったときのことだった。「中央大学から入団しました、香坂です。よろしくお願いします」。柚木さんの第一声は、こうだった・・・
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