
ジャイアンツ球場でのイースタンの試合。二軍球場がプロスカウトの主な仕事場となる
巨人軍に選手として入団、28歳で球団職員となり、さまざまな仕事を経験してきた。選手として戦力外選手としての通告を受けたものの球団からは、また野球に携わっていけるチャンスをもらった。与えられた仕事は何でも懸命にやろう。だから僕の巨人軍の職歴は直接野球に関する仕事もあれば、野球とは離れた仕事も経験することになり、さまざまだった。
打撃投手、先乗りスコアラー、チーム付き広報(広報部)、ファンサービス、社会貢献。そして、最後に命ぜられた仕事はプロスカウトだった。それまで一番長く務めたのは主に報道対応の仕事である広報部で12年間だったが、こうして退団し、振り返ればプロスカウトの仕事も通算で同じ12年間務めた。
プロスカウトの仕事は競技者出身の僕にとってはまさに「本職」、スコアラーと同様に「野球の仕事」として、自分自身をワクワクさせるものだった。しかし、それは責任も伴い、「人の人生を左右する」大事な仕事だった。
ここではまず、あまり知られていないプロスカウトの仕事を読者の方々に知っていただき、その複雑で奥の深い仕事の内容をできるだけ表現したいと思います。
まさかのクビ?
僕の経験したさまざまな仕事について、いろいろな人によく聞かれたのは一つはまず「先乗りスコアラー」って何するの? が多かった。「先乗りスコアラー」は一言で言って「偵察」であり、自チームが次に対戦するチームの直前の試合に一人で先に乗り込んで、偵察情報を自チームへ報告をする。日本中どこへでも一人旅で飛び回り、まあ、「スパイ」と言われればスパイなのかもしれないので、新聞などではこの先乗りスコアラーをよく「007」などと表現していることがあった。そして今から14年前の2008年、主に報道関係者の窓口として広報部に籍を置き、続いてファンサービス部勤務を命ぜられた。
その3年後……。次の仕事として告げられたのが「プロスカウト」だった。しかし当時、役員に受けた内示は「来季からはスコアラーをやってもらうよ」という言葉だった。えっ、またスコアラー? 17年前の前職に戻るのか……。スコアラーはやはり大変だったなという印象しかなかったので、そのとき僕は「ブランクがあり過ぎ、仕事の内容も様変わりしていて、また体力的にも以前のように務められるかどうか、かなり不安があります」と柔らかく答えた。するとその役員は「そうか、ならば君の居場所はないな」とサラリと告げられて話は終わる。
えっ? こんな契約のやり取りはこれまでなかったことだった。ここまでも長く巨人軍に籍を置き・・・
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