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香坂英典コラム 第101回 全府中の「岩田鉄五郎」【2】

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大きな声で「オリャァー!」と叫びながら投げる平井[写真=筆者提供]


「オリャァー!」の平井


 水島新司さんの野球漫画に登場する愛すべきキャラクター「岩田鉄五郎」。漫画の中で72歳のときに再び選手兼監督となり現役復帰したが、130キロ台のストレートを生かす投球術で一説によると、生涯成績で204勝を挙げているという。そんな「岩田鉄五郎」を彷彿とさせるのが、今年53歳になる全府中倶楽部(以下、全府中)のコーチ兼任のベテラン左腕・平井孝治(あつはる)だ。

 平井が2022年に残した投手としての全成績は以下だ。9試合に登板、18回1/3を投げ、1勝0敗、被安打11、奪三振11、四球4、死球2、失点2、自責点2、防御率0.98。抜群の安定感を誇ったピッチングを見せてくれた。何度も言うが、年齢は今年で53歳だ。平井は左の本格派で、バランスの良い、ゆったりとした投球フォームは、体の力が抜けている。それでいてボールをリリースするときにはシャープに腕を振り、カットボール、スライダー、ツーシーム、カーブ、チェンジアップ、ナックルカーブなど、ありとあらゆる変化球を駆使して投球を組み立てる。

 平井の理にかなった投球のメカニズムに合った投球フォームを見ていると、全盛期の「投球の妙」が目の前に浮かんできそうな気がした。ストレートの球速は130キロ台ではあるが、ほかの変化球を使った緩急の投球が絶妙で、ストレートを速く見せるテクニックがある。

「若いころもストレートのMAXは140キロくらいでしたし、変化球の種類もたくさん投げられましたけど、投球パターンはもう何年も、いや何十年も変わってないです」

 平井の、この「投球術」は秀逸であり・・・

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