強い思いが言葉に表れる──。2023年を勝負の年と位置付ける男たちの声を届ける新連載。第1回は強力オリックス投手陣を支える男に迫る。チームを最優先に考える背番号2だが、近年は捕手併用が続き、今季は強打の森友哉がFA加入。1人の捕手としての矜恃を胸に、マスクを簡単に譲るつもりはない。 取材・文=鶴田成秀 写真=佐藤真一、BBM 1歩目は己を知ること
捕球・送球技術の向上に打撃練習。ブルペンに入って投手陣とのコミュニケーションを図り、内野手との連係プレーの確認もある。捕手の仕事は多岐にわたりキャンプもせわしない。複数の練習場を行き来し、体も頭もフル稼働するとあって、平等に与えられる時間さえも1日24時間では足りない。
「そう思うこともありますけど、それを言ったら、投打の練習をやっている大谷選手(大谷翔平・エンゼルス)に失礼ですからね(笑)。キャンプは守備も打撃もトータルでレベルアップすることが目的で、『これ』というテーマはない。だからこそ、いかに効率よく練習するかも大事なんですけど、そこまで考え過ぎてもいないんですよね。純粋にもっと野球がうまくなりたい。そう思って過ごしている。そんな毎日なんですよ」 今年でプロ10年目。根底にある思いは変わらないからこそ、月日が経つのも「あっという間」だ。姿勢は今季も同じ。だから、強打の捕手・森友哉が
西武からFA加入して周囲が“捕手争い”をはやし立てるが、意識すべきは、そこではない。
「もう周りからもいっぱい聞かれますけど、友哉は高い壁になるのは間違いないですよ(笑)。でも、友哉と争うというより自分自身との戦い。自分自身に挑んでいくのは、毎年のことです」 挑む自分は、昨季の自分か、まだ見ぬ理想の自分なのか──。そんな問いに対する答えが、捕手・若月健矢をよく表している。
「う~ん……昨年の成績に満足していても仕方ないですからね。自分の数字、成績もそうですけど、もっとチームを勝たせられるキャッチャーになっていかないといけない。僕はまだまだ成長できる。だから、良い意味で明確なものはない。強いて言うなら、『本当にチームを勝たせられる自分』。そこに挑んでいく感じなんですよね」 勝利に導く──。揺るがぬ信念は、経験を重ね、多くの場数を踏んでより強いものになっていった。
「どっちで後悔するか、ですよね」 昨秋の日本シリーズ第4戦(京セラドーム)。1分け2敗と苦境に立たされていた中で、試合は1点リードの5回表、一死三塁のピンチで
宇田川優希を投入し、フォークを多投し連続三振。後逸のリスクもある中で、フォークの多投を選択した背番号2は試合後に、「後ろに逸らして後悔するか。それを嫌がって真っすぐを投げて後悔するか。それなら後逸して後悔したほうがいい」と言っていた。捕手の矜恃がにじみ出るが、そこに含まれるのはベンチの意図を汲んでの決断でもあるということだ。
「一番は(中嶋聡)監督の意図を・・・
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