
あの日以降、私は「早川くん」のファンだ。ちなみに「20260423」は素数ではなく、例えば「37」で割れる
野球のボールをかたどったキーホルダーが送られてきた。早稲田大学野球部の米国遠征実現に向けた少額ながら参加したクラウドファンディングのリターンだった。
私は在学中、野球部と何の縁もなかった早大OBだが、卒業から30年近く経った2020年の秋、縁あって、現役野球部員に講演をすることになったのだ(その縁で今回クラファンに参加した)。
社会人の先輩として、就職とか仕事の話を求められていた気がするが、若者の前でスベるのが怖くて、自前の秘蔵野球映像開陳とかクイズ大会(早大出身のプロ最多勝投手は誰?)とか、薄っぺらい内容になってしまった。申し訳ない。そういえば4年生の
早川隆久くん(現
楽天)が熱心に聞いてくれていたなぁ。
では、今、現役大学野球部員に就職や就活について話すなら――。
4月7日の日刊スポーツが報じていた東京六大学一般企業就職先ランキングは、1位から7位まで、すべて金融系の大企業だった。
私世代で「体育会系→金融系」というと「努力と根性と筋肉で死ぬほど働きます!」という感じだった。今は違うはず。「努力と根性と筋肉」くんを積極採用するとは思えない。
就活に勝つために、どんな準備をするべきか。地味かつ地道な大原則を言えば、徹底的に「考える」ことだと思う。まずは野球について。そして野球以外についても。
この混迷の時代、大企業でも、大企業だからこそ、考える力、考え抜く力を持つ若者を求めている。
対して日々の野球を「最高の思考実験の場」と捉えるのだ。自分を鍛えるために、ライバルに勝つために、自チームが勝つために考えた量と質の結果が明確に出るゲームとして。
だから今から考えて考えて考え抜く。面白いじゃないか。そして面接で「努力と根性と筋肉でがんばりました」じゃなく「私はこんなに考えました」で勝負するのだ。
これでも会社員時代、面接官を何度も務めた身だ。ちょっとは信じてみてほしい。
では最後に、面接官として体験した最高の受け答えを。面白質問担当だった私の定番質問「好きな素数は?」に、ある学生が面接当日の日付=西暦と月と日をひとつなぎに並べた数字を即答したのだ(例えば本号発売翌日なら『20260423』)。
「御社の面接に来た今日の日付が好きな素数です」――その反射神経に腰を抜かした(たぶん適当だろうが)。もちろん私は最高点を付けた。あっ、でも野球部員なら反射神経は鍛えられているはずだな。健闘を祈る。
PROFILE スージー鈴木●1966年生まれ、野球文化評論家、音楽評論家。『スージー鈴木の音楽ソムリエ』(BS日テレ142ch)、『9の音粋』(BAYFM)出演中。近著に『日本ポップス史1966-2023』(NHK出版新書)『沢田研二の音楽を聴く1980-1985』(日刊現代)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる』(ブックマン社)など。