週刊ベースボールONLINE

ドラフト1位指名選手/第1回1巡目入札クローズアップ

松井裕樹[楽天1位]「田中投手から吸収してゆくゆくは越えてみたい」

 

楽天のマスコットを手にして笑顔を見せる松井。あこがれの舞台に、いよいよ足を踏み入れる



高校生投手歴代2位タイ5球団競合の末、交渉権は楽天へ
稀代のサウスポーが東北から目指す日本の頂

取材・文=富田庸 写真=高塩隆

5球団競合は楽天が勝利

 結果論になってしまうが、運命に導かれたかのような東北楽天入りだった気がする。ドラフト直前の本誌独占インタビューで、松井裕樹は珍しく個人について言及。これまでは自らの立場、発言の影響力を考えてか、特定の球団名、選手名を出すことを極力避けているようだった。だが、楽天がリーグ優勝を決めた際の田中将大の救援登板について話題を振ると、「すご過ぎます。優勝がかかった大事な場面で連続三振が取れるなんて……」と、わずかではあるが声のトーンを上げたのだ。

 今季の田中はレギュラーシーズン負けなしの24連勝。さらには気迫を前面に押し出すピッチングスタイル。インタビュー時に「勝てる投手に」と色紙に書いた松井にとって、左右の違いこそあれ、田中は理想とする投手だった。「今年負けていないのがまず、すごいところ。また、勝負どころ、力を入れる場所が分かっている。目標とさせてもらっているピッチャーなので、学べるものはたくさんあると思う。いろいろなものを吸収して、ゆくゆくは超えていけるように頑張っていきたい」

 ドラフト指名されたことで、松井は今まで封印していた気持ちを、ついに解禁した。自らの進路が決まるドラフト会議は、会見場でなく別室で野呂雅之監督、父・良友さん、母・眞琴さん、チームメートと見守った。日本ハムを皮切りに、DeNAソフトバンク中日、そして楽天と、今ドラフト最多の5球団が1巡目で松井を指名。そしてクジ引きでは、最後に登場した楽天・立花陽三球団社長が高々と当たりクジを天に掲げる。その瞬間、桐光学園高の記者会見場に集まった約130人の報道陣は、主役が不在ながらもどっと沸いた。

 一方、東京都内のドラフト会場。記者に囲まれた星野仙一監督は、指名から時間が経過しているにもかかわらず、その顔は上気したままだった。「やっぱり社長は持っているなあ。(クジ引きは)残りものに福がある。社長は震えていたよ(笑)。今年は攻めようと話していた。外れたら外れたでいいじゃないかと。松井の良さも攻めていくところかな。田中将大のようなタイプだよ。狙っていた球団は8、9球団あったと思うよ」

 さらには育成法についても「無理はさせたくない。注目されるだろうし。まだ18歳だから、若者らしく良いところを出してほしいね」。そして最後に「ありがとう! 松井を引き当ててくれて!」。昨年の東福岡高・森雄大獲得に続き、2年連続で強運を発揮した立花社長に感謝した。

▲最後にクジを引いた楽天・立花社長が当たりをゲット。2球団が競合した昨年の東福岡高・森雄大獲得に続き、またしても強運ぶりを発揮した。なお、高校生投手で5球団競合は09年の花巻東・菊池雄星(現西武)に次ぎ歴代2位タイ。1986年の中日1位の享栄高・近藤真一、88年の高知商高・岡幸俊ヤクルト2位)、2007年高校生ドラフト1位の仙台育英高・佐藤由規(現ヤクルト)に並ぶものだった



復興と合致する向かっていく姿勢

 交渉権確定からおよそ2時間後、楽天球団が神奈川県川崎市にある桐光学園高へと指名あいさつに訪れた。本人、野呂監督、両親らとしばし会談した後、福田功スカウト部副部長がこう切り出した・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング