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記憶にも記録にも残る新人がいた。恐れ知らずのルーキーたちは、果敢に歴戦の猛者に勝負を挑み、そして勝利。名声を高めてやがてスターの仲間入りを果たした。輝いた新人たちの系譜を辿る第1特集。まずは今季の両リーグ新人王に迫る。

取材・構成=菊池仁志 写真=桜井ひとし、BBM

※このページの最後に小川選手の直筆サイン入り色紙応募についてお知らせがございます

敵愾心に火がついた瞬間

――新人王、受賞おめでとうございます。

小川 ありがとうございます。1年目しかいただくことができない賞ですので、取れたことは本当にうれしいです。でもこれに満足してはいけないと思っているので、来年にしっかりつなげていかないといけないと考えています。

――シーズン前、ルーキーでは巨人菅野智之投手、阪神藤浪晋太郎投手への注目度の方が高かったように思います。2人へのライバル心はなかったでしょうか。

小川 最初のころはそういう気持ちはなくて、「自分は自分」だと。やれることをしっかりやろうという気持ちを保ってやっていました。でも、2ケタ勝って(今季の新人最速で10勝に到達、7月13日対広島・神宮)、そういう土俵に上がったと感じたあたりから、やるからには負けたくないっていう気持ちが芽生えてきたように思います。

――そもそも、新人王は意識していた?

小川 意識はしていましたね。まったくしてないってことはないです。

――それは開幕前から。

小川 口に出すことはありませんでしたけど、自分の心の中で、そういう思いは持っていました。

─―1年間、先発ローテーションを守り、16勝で最多勝のタイトルにも輝きました。

小川 あっという間だったと言えば、そうだったんですけど、本当にローテーションを守ることに必死でした。目の前の試合に集中して、後先のことは考えずに全力で戦ってきたなっていう……。

▲最多勝と新人王、勝率第一位投手のタイトルを獲得。並み居る選手と肩を並べた(写真=菅原淳)



――16勝を挙げたことへの自己評価はいかがでしょうか。

小川 「16」勝つことができたんですけど、全試合完投できたわけではないですから、何とも言いようがないですね。後ろで投げてくださった方々がいて、打線が点を取ってくれてっていう。勝ちの数よりは負けが少なくいけたことが(4敗)良かったと自分では思っています。



――勝率第一位投手となれた要因は?

小川 失点してもすぐに気持ちを切り替えられるようにして、最少失点で試合を作るという発想になれたのがよかったかな、と思っています。

――そういう発想になる契機があった?

小川 5月の阪神戦ですね(11日、松山)。その試合では5失点して4回でマウンドを降りているんですが、そのときがランナーを背負って「1人もかえさない」っていう苦しいピッチングをしてしまっていて。ボールが先行してフォアボール、そしてタイムリーっていう流れにはまった試合でした。その試合で村中(恭兵)さんと話をして、「試合を作ればいいんだ」ってことを話してもらって。そこから切り替えられるようになりました。

――5月4日の阪神戦(甲子園)でも4回6失点KO。ここを乗り切り、6月から7月にかけて7連勝しました。しかし、8月24日の広島戦(マツダ広島)で3回6失点KO。このあたりが疲労のピークだったかと思います。

小川 そうですね。5月の阪神戦のときもきつかったんですけど。

――そのような状態でもローテーションを飛ばすことがなかったことに意味があると思います。

小川 体が万全じゃないどころか、疲労がピークのときもローテを外さなかったというのは、自分なりにいろいろな改善策を考えたり、周りの人に対処の仕方を教わったりするきっかけになりました。体のケアについて実践しながら乗り越えられたのは大きいと思います。そういうところは忘れずに来季もやっていきたいですね。

――具体的にはどんな対処法を?

小川 効果を感じたのは交代浴。温かいお湯と冷水に交互に浸かる入浴ですね。あとはアイシングを普段以上にマメにやったり、ストレッチを増やして試合に臨むとか、キャッチボールの強度を調整したりとかですね。そういうところに心を配ったのは来季以降につながります。絶対に必要なことだと感じました。



シーズンを完走、日の丸も初経験

――さまざまなタイトルや賞を受け、秋季キャンプ後も息つく暇もないと思いますが、体の状態はどうですか。

小川 疲れは、まあ……。でも体の痛みとかはありません。シーズン終わった直後は下半身が張っていたりしたんですけど。

――肩、ヒジも問題なし。

小川 ハイ、全然大丈夫です。

――シーズンを完走した上に日本代表にも選出され、台湾代表との親善試合では初戦の先発を任されました。

小川 今回、選んでいただいて、小久保(裕紀)監督の下で戦えて率直にうれしかったですね。初めて日の丸を背負って戦ってみて、また違う緊張感というか。そういう新たなものを体験できたのがプラスに向かうと思います。

――シーズンで味わった緊張感とは違った。

小川 シーズンと同じ流れで準備とかをできるのであれば、落ち着いてできるんでしょうけどね。環境が違って、グラウンドも審判も応援スタイルも全然違うという中で、しかも1戦目の先発でしたし。大事な試合だったので、必ず勝たなければならないというプレッシャーも大きかったです。

――そういう重圧を味わえたことも、今後に生かしたいですね。

小川 シーズン中は後悔のない投球をしようと自分にプレッシャーをかけながらやっていたんですけど、代表の試合はそんなことをしなくても勝手にのしかかってくるような感じがありました。親善試合とはいえ、(日本代表は)初めてだったので。

――それでも強気のスタイルはいつもと変わらないものでした。

小川 「絶対に勝つ」っていう気持ちはどんなときも、バッター一人ひとりに対して持っています。どうやって打ち取るか、いつもどおり、それだけを考えて立ち向かうことができましたね。

――シーズン中も含めて、1年目ですし、怖いバッターもいたのではないですか。

小川 そこは相性の悪いバッターもいますし、長打があるバッターもいます。当然、そういう気持ちはあるんですけど、「打たれたらどうしよう」みたいなことを考えても、いいことは一つもないんですよね。そういう打者に対しても気持ちだけは負けないと思って投げています。結果はどうなるか分からないですけど、そういう心構えでいることで、自分の力を出すことしかできないですから・・・

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