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「プロ野球経営にコストカットはあり得ない」

中日“鬼”査定の是非を問う!

 

坂井保之[プロ野球経営評論家]が中日“鬼”査定の是非を問う!

2013年オフの契約更改で最も耳目を集めたのは中日の契約更改だろう。
落合GM主導の下、大幅ダウン続出で年俸総額が8億円超も減額。果たして、この手法の裏にあるものとは?
西武やダイエーの球団代表を務めた坂井保之氏に聞いた。

取材・構成=小林光男
写真=BBM

功労者とは?

 GM就任を承諾したからには、チームを強くして、優勝させたい──。2年間、球団を離れていた落合博満GMが、まずこういった思いを抱くのは至極当然のこと。落合監督最終年の2011年、リーグ優勝を果たした中日はその後、2位、4位と坂道を転がり落ちるように順位を落とし、チーム力も大幅ダウン。それを鑑みれば落合GMが着手した年俸ダウンも大いに合点がいく。かつての強さを取り戻すためには、まず締めるところは締めないといけない。選手に“発奮喚起剤”を撒いたともとらえられるし、野球ファンに対しても“落合GMはチームを変えようとしている”とアピールにもなる。

 なにせ、8年間指揮を執り、すべてAクラスでリーグ優勝を4回果たしていた監督・落合をあっさりと追い払ってしまうくらい悪い土壌だった中日。さらに、地元財界とも折り合いが悪く、そんな人たちとも全面勝負をしないといけない(ただ、彼らは落合GMを肌合いで嫌っているだけ。理論で動いている落合GMと感情論では、どちらに軍配が上がるかは言わずもがなだろう)。悪い土壌をほじくり返して、再び作り直すには尋常な手段ではダメ。アッと驚くような大胆な手法を駆使しなければいけない。

 まずは井端弘和に年俸1億9000万円から88パーセントの大減俸となる3000万円を提示。「長年、ドラゴンズを支えた功労者になんて仕打ちを──」と憤慨した人も多かったかもしれないが、これが落合GMの大ナタ。それに功労者という言葉が解せない。その解釈は私にない。なぜなら、功労者を大事にする考えはフロント陣の保身に直結するからだ。たとえ功労者の成績が落ち、それでも手厚く扱っていたら、その取り巻きやオールドファンが安心する。「この球団代表は話が分かる」と支持してもらえる。もちろん、功労者を粗末にすると波風立つ場合があるから、手綱さばきは必要かもしれないが、私の中でもそういった思想はゼロだ。

 チームが強くなるも、弱くなるも、全部人間の性(さが)。管理野球がいいから、年俸が高いからというのは結果論。性がいやしければ、チームは瓦解する。一端、瓦解したら立て直すには時間がかかる、というか、かけた方がいい。また土を耕して、小さい苗を植えて、また翌年、同じことをやる。3年かけて育て上げ、4年目で勝負となるが、おそらく落合GMは3年かけないだろう。

▲球団に復帰し、まずは契約更改で手腕を発揮した落合GM[写真=佐藤真一]



野球人の本能

 まあ、ともかく、年俸が低いからといって、プレーに力が入らなくなるなんてことは野球人にはあり得ない。幼いころから野球に熱中して、プロまで上り詰めた者たちの集まりだ。白球が目の前にあれば、野球人としてどうベストを尽くすか考えるのが本能だ。しかし・・・

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