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2014 変化球特集

オリックス金子千尋 金子流変化球の奥義を語る

 



首位を走るオリックスのエース・金子千尋が輝きを放っている。4月4日の西武戦で相手打線を2安打に抑えて今季初完封勝利を挙げると、4月25日の楽天戦では被安打1で早くも今季2度目の完封達成。さらに、5月31日には巨人打線を相手に9回をノーヒットノーラン。味方の援護なく快挙達成とはならなかったが、セ2連覇中のチームを苦しめた。唸るような剛速球を持っているわけではない。しかし、金子には豊富な球種と12球団一とも評されるキレ、コントロールがある。しなやかな投球で打者を翻ろうする金子流変化球の奥義とは――。

取材・構成=三橋祐子 写真=佐藤真一、BBM

自分を生かす道


──金子選手が初めて覚えた変化球は何ですか。

金子 中学生のときに覚えたカーブです。変化していることが分かりやすいですし、日本だと一番初めに投げる変化球じゃないですかね。時代や環境にもよると思いますが、僕が中学生ぐらいのときはカーブ、スライダー、フォークの時代でした。

──その後、徐々に球種を増やしていったのは必要性を感じて?

金子 いろいろな球種を投げたいという単純な気持ちもありましたし、もともと、僕は自分のことをストレートだけで抑えられるピッチャーだとは思っていなかったので、抑えるために何が必要かと考えたときに、変化球だと。

 ただ、実際にこれだけ球種が多くなったのはプロに入ってからで、当時はそこまで深く考えていなかったです。一軍で投げるようになって僕より球が速い、またすごい変化球を投げるピッチャーがたくさんいて、その中でどうやって結果を残すかと考えたときに、自分にはズバ抜けているモノがなかったので、いろいろな球種を投げてバッターを打ち取ることを考えました。

──どのようにして覚えましたか?

金子 僕の場合は、まず試合で投げてみます。そうしないとどんな変化をしているのか分からないし、バッターの反応も分かりません。

──いきなり試合で、ですか。

金子 実戦で投げるために覚えるわけですよね? 極端な話ですが、ブルペンで投げただけでバッターに向かって投げていないのに、誰の判断で使える、使えないを決めるのか。キャッチャーも打つ人ではないので目線も違いますし、何が来るか分かっていて捕るわけですから、ピッチャーやキャッチャーの判断だけでは意味がないんです。

 よく、「完成する前に投げて不安じゃないですか?」と聞かれますが、完成って誰が決めるんでしょう? 自分で完成と思った球が、打つ側のバッターから見た場合、たいしたことない変化の可能性もあります。投げるのは自分ですけど、打つのはバッター。何を完成ととらえるかですよね。

──では、金子選手は何を持って完成とするのですか。

金子 今まで変化球を投げていて完成と思ったことは一度もありません。100パーセント打たれなくなったら完成かもしれませんが、そんな球はありません。もちろん精度をよくするために、打ちづらい変化球を求めますけど、それが100パーセントになることはない。僕の中で完成はありませんね。

──常に追求していくものですか。

金子 追求もしますけど、そのときのはやりとかバッターのタイプによって投げる変化球も変わってきますよね。何年か前まではツーシームとか、ちょっとした変化のボールがはやりましたけど、今はそれよりももっと速くて鋭い変化をするボールの方が、バッターとしては打ちづらいのかなと思います。ウチでいったらディクソンのナックルカーブですよね。本人はスライダーと言っていますけど。僕はそのときどきでほかの選手が投げていない変化球を投げたいなと思っています。
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