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◆甲子園球場◆開始18時17分(試合時間3時間26分)◆観衆45.293人[ソ]=●スタンリッジ−森福−岩嵜−岡島−森[神]=○メッセンジャー−福原−呉



CSの勢いを維持したタイガース打線


5回裏、リードを3点と広げた直後、二死一、二塁から、五番・マートンが中越えに2点適時二塁打。一走・ゴメスの激走に「パピー(ゴメス)もよく走ってくれたね」と笑顔



 阪神が6対2で初戦をモノにしたわけですが、まず感じたのはタイガースの雰囲気の良さです。クライマックスシリーズファーストステージで広島は阪神に敗れてしまいましたが、あのときの好調な状態を維持していると感じました。

 阪神・メッセンジャー、ソフトバンク・スタンリッジの両先発ですが、短期決戦ということもあり、初回から飛ばしていたように見えました。立ち上がりからボールも走っていましたし、先制点を与えないように低めへの意識も感じました。

 身長が高くて、真っすぐで押すタイプのスタンリッジは、個人的に阪神時代(10〜13年に所属)から好きなピッチャーの一人です。この日も重い直球を軸に左バッターにはツーシーム、右打者にはスライダーとシーズンと同じような配球で、1巡目はうまく抑えていました。

 しかし2巡目となった4回につかまってしまいます。一死二塁でゴメスにタイムリーツーベースを浴びるわけですが、ツーシームが高めに浮き、甘くなってしまいました。重要な先制点を与えてしまったことで、阪神に勢いをつけてしまいました。

好機を生かした阪神と逃したソフトバンク


 5回裏の5点ですが、スタンリッジ投手が阪神のポイントゲッターたちの存在を意識し過ぎたために、大量得点につながってしまったと感じました。好調な打者の前にランナーをためたくないのが投手の心理。一番・西岡(剛)さんと三番・鳥谷(敬)さんに四球を与え、ビッグイニングになってしまうわけですが、非常に厳しいコースを狙っていたので、「ここで切りたい」と強く思い過ぎた結果、ボールがわずかに外れてフォアボールを出してしまったと思います。

 ちなみにこの回に2点タイムリーを放ったマートンですが、得点圏にランナーを置いた打席では、センターを中心に打ち返すシュアなバッティングを心掛けるバッターです。この打席でもコンパクトに打ち返しました。

 そしてスタンリッジが降板し、福留(孝介)さんの打席で森福(允彦)さんがマウンドに上がりました。同じセットアッパーとして、「非常に難しい場面」と感じました。もちろん追加点を与えたくないですから、厳しいコースを狙います。しかし、その思いが強過ぎて逆にボールが甘くなってしまうときがあります。外を狙ったボールが中に入ってしまう。いくら左投手対左打者とはいえ、福留さんも当たっているわけですから、甘いボールは見逃してくれません。

 対するソフトバンク打線は6回表に李大浩の犠飛で1点を返しましたが、タイムリーと犠牲フライとではチームの勢いに差が出ます。あの場面で2、3点返していれば勝負は分からなかったと思います。

 まさか阪神打線が6点を奪い、大差で勝つとは思っていませんでした。1点差のロースコアになると予想していましたので……。

 僕が感じたこの試合のポイントは3回表、一死二塁でスタンリッジが送りバントを失敗し、チャンスをつぶしてしまったこと。そして、4回裏に初めて迎えたチャンスを阪神がしっかり生かしたことです。その結果、流れがタイガースに傾いてしまったと思います。

MatchReport
阪神がホームの大声援を受けて初戦を取った。4回、中前打の上本を二塁に置いてゴメスが左翼へ先制適時二塁打。5回にはゴメス、マートン、福留の3連打で一気に5得点し勝負を決めた。先発のメッセンジャーは6回に2度の満塁のピンチを招きながらも7回を6安打1失点。ソフトバンクは5回途中6失点のスタンリッジが誤算だった。

阪神先発のメッセンジャーは1、2回を三者凡退の見事な立ち上がりでリズムに乗った。6点のリードを得た6、7回に1点ずつを失うも、7回109 球の粘投で勝利を呼び込んだ



9回表、4点リードでも阪神ベンチは勝負に徹した。ポストシーズン6戦6登板中の守護神・呉昇桓をマウンドへ送り、先勝。阪神は助っ人4人がそろって勝利に貢献した



ソフトバンクは6点を追う6回表、松中信彦が代打で登場。日本シリーズ11 年ぶりの安打(中前打)を放つと、その後、三塁まで進み、李大浩の犠飛で生還した



Nakata's Choiceターニングポイント!



3回表、無死一塁から八番・細川亨が送りバント。ソフトバンクベンチは次打者である投手のスタンリッジにも送りバントを命じたが、二走・今宮健太が三塁でタッチアウトで先制のチャンスをつぶした……

解説者PROFILE
なかた・れん●1990年7月21日生まれ、24 歳。右投右打。189cm91kg。大阪府出身。広陵高−広島09年2位。広島が誇るタフネスリリーバー。

荒木大輔が見た!このシーン!


4回裏、一死二塁、阪神の四番・ゴメスはスタンリッジの失投を見逃さず。レフト線へ先制の適時二塁打を放った



失投が尾を引き内角を攻められず

 コントロールミスのツーシーム。4回表一死二塁、内角を狙ったスタンリッジの1球が真ん中に入り、それを逃さずにとらえたゴメスの先制打が試合の行方を左右したと言っても過言ではなかったですね。そこからソフトバンクバッテリーは内角を使うことができず次の回、二死満塁で再びゴメスを迎えても配球は外一辺倒。

 結局、1−1からの3球目、若干甘く入ったスライダーを左翼へ2点適時打とされて、0対3と点差を広げられてしまいました。この場面でソフトバンクバッテリーが1球でも内角を突いて、その後にスライダーで勝負していれば結果は違ったかもしれません。1球の失投がソフトバンクバッテリーの選択肢を狭めてしまいました。
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