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2014年ペナントレース総括

巨人 得点圏打率1位と防御率1位の究極形

 


144試合82勝61敗1分 勝率.573
[ホーム44勝27敗1分/ビジター38勝34敗0分]
[交流戦16勝8敗0分 勝率.667 優勝]


◎投手力


 チーム防御率3.58はリーグ1位。同じく優勝を飾った13年よりも0.37点、12年と比較すると1.42点ほど増えてはいるが、第2次原政権となった06年以降、9年連続で防御率はリーグトップ3に入っており、チームの屋台骨を支えているのが、投手力を中心としたディフェンスであることをうかがい知ることができる。

 先発では昨年、新人ながら13勝を挙げた菅野智之が12勝を挙げて、再びのチーム勝ち頭に。右手の負傷や右ヒジの違和感などで2度の離脱もあり、勝ち星を伸ばせなかったが、防御率2.33で初のタイトルとMVPを獲得した。ローテーション投手では、杉内俊哉巨人移籍3年連続の2ケタ勝利(10勝)も、相次ぐ故障者で2ケタ勝利は2人だけ。それでも大竹寛が9勝、エース・内海哲也が7勝、4年目・小山雄輝が6勝とコツコツと勝ち星を積み重ねた。

▲2年連続の2ケタ12勝で、最優秀防御率とベストナイン、セ・リーグMVPを獲得した菅野



 一方で、昨季は防御率2.57と安定感を誇った救援陣が、今季は4.01と苦しんだ。セーブ数48→41、ホールド数108→96と軒並み成績を落としている。ただし救援投手の月間防御率は7月の5・40から8月3.70。特に9月は優勝時点までで2.67と右肩上がりで、猛スパートを支えたと言える。

◎攻撃力


 記録的な貧打だった、と言わざるを得ない。9月26日のリーグ優勝時点でのチーム打率は.256で何とリーグ6位。リーグ最低打率での優勝は61年・巨人、82年・西武、87年・西武、11年・中日に次ぐプロ野球史上5度目の貧打記録であった。

 それもそのはず、10年に1人、11年に2人、12年に3人、13年に4人いた打撃ランキング10傑入りの選手が、今季は05年以来8年ぶりにゼロ。であるばかりか、規定打席到達者での3割打者は1人もおらず(05年は3人)、同13位の長野久義(.297)がチームトップで、これに次ぐのが同16位の坂本勇人(.279)。打撃ランキング最下位の27位は、阿部慎之助(.248)だった。

 原辰徳監督は打順の入れ替えを頻繁に行い、活性化を図ったが、上向かず。それでも3連覇を引き寄せたのは、優勝時点でのチーム得点圏打率が.291とリーグトップであり、最終的に得点圏打率ランキングには長野(.358)、片岡治大(.333)、坂本(.328)と3人がトップ10入り。かつ勝利打点ランキングでは坂本が14点で1位、長野が11点で4位、と打つべき人が打つべきときに打ち、効率よく得点を挙げていたと考えられる。なお、先制点を挙げた試合は55勝(18敗、1位)。先行逃げ切り型のチームであった。

◎守備力


 守備率・987はリーグトップで、失策71は最少と、意外にも守り勝つ野球がベースとなっていることが分かる。“投手力”で触れたが、リーグトップの防御率を誇る投手陣とともに、少ない援護を守り抜いてのリーグ3連覇だったというわけ。なお、捕手部門では失策わずかに1の阿部が、三塁手部門でも村田修一がゴールデングラブの栄誉に輝いている。

【2014年の主な達成記録】


▼800勝=原辰徳監督、4月4日対中日(ナゴヤドーム)、プロ野球15人目
▼200盗塁=鈴木尚広、4月29日対ヤクルト(東京ドーム)、プロ野球72人目
▼1000安打=片岡治大、5月15日対ヤクルト(東京ドーム)、プロ野球276人目
▼1000安打=坂本勇人、5月20日対西武(西武ドーム)、プロ野球277人目
▼1500試合=村田修一、6月3日対ソフトバンク(ヤフオクドーム)、プロ野球182人目
▼200ホールド=山口鉄也、6月6日対西武(東京ドーム)、プロ野球史上初
▼1000打点=阿部慎之助、6月7日対西武(東京ドーム)、プロ野球42人目
▼2000奪三振=杉内俊哉、7月12日対阪神(東京ドーム)、プロ野球22人目
▼300本塁打=村田修一、8月1日対広島(東京ドーム)、プロ野球40人目
▼1000試合=鈴木尚広、8月22日対中日(東京ドーム)、プロ野球465人目

【はみ出しデータボックス】杉内俊哉は類まれな奪三振マシン


 杉内はチームで唯一ローテーションを守り10勝。移籍1年目の12年から、V3期間中ただ一人3年連続10勝以上をマークした。巨人で移籍1年目から2ケタ勝利を3年続けたのは、別所毅彦(49〜57年まで9年連続)に次ぎ2人目だ。

 7月22日の阪神戦でプロ野球22人目の2000奪三振。要したイニングは1930回2/3で、11年石井一久(西武)の1967回2/3を抜いて史上最速で達成した。1000奪三振は979回1/3かかったが、1001〜2000奪三振は951回1/3とペースアップ。1001〜2000奪三振に1000イニングかからなかったのは、杉内が初である。

 2000奪三振以上22人のライフタイムで、投球イニングを上回る奪三振は杉内ひとり。1000奪三振以上の140人に条件を広げても、野茂英雄(近鉄=1051回1/3で1204奪三振)と二人しかいない。たぐいまれな奪三振の投球術を武器に、4年連続2ケタ勝利を目指す。
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