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今年の新語・流行語のトップ10入りを果たした「カープ女子」。まさに球界の枠を超えたと言っても過言ではないが、なにも若い女性だけが「カープ女子」ではない。さまざまな年代の方がカープを愛しているからこそ、広島人気は単なるブームで終わらないのだ。元広島ホームテレビ・山田幸美アナウンサーの視点――。
文=山田幸美(フリーアナウンサー) 写真=前島進

▲カープ女子をはじめ、多くの広島ファンが球場に詰めかけた。年季の入ったファンが多いのも特徴だと言えるだろう



 例年より長く楽しめた野球シーズンも一度冬眠期間と思いきや……赤いユニフォームを身にまといシーズン同様熱い声援を送る女性たち。今年世間を大いに賑わせた“カープ女子”だ。12月2日、銀座にある広島ブランドショップTAUでは昨年に続き『広島カープ女子会』が開催され、私も司会として参加した。

 ゲストは今やすっかりチームの顔となったキクマルコンビこと、菊池涼介選手と丸佳浩選手。定員60名に対し750通を超える応募があったと聞くだけで、あらためて今年のカープ人気を実感する。

「席に座った瞬間から圧倒されてしまった」

 そう二人が話すよう、素顔を見逃すまい! と終始熱視線が注がれた。

“カープ女子”という言葉が全国的に認知されたのは今年に入ってから。流行語大賞トップ10入りを果たしたことも自然な流れと思えるほどに、連日テレビや紙面を賑わせた。虎女、鷹ガールなど他球団にも女性のファンが大勢いる中、なぜカープ女子だけが突出して注目されたのか。

「若くてかっこいい選手が多い」、「グッズがかわいい」など、人気に便乗し最近ファンになったという女性も少なくない。しかし取材をしていて感じるのが、カープ女子の大半がとても応援熱心ということだ。カープ女子会ではキクマルの活躍シーンの写真が映されると、いつのどんな試合だったか鮮明に覚えている方が少なくなかった。全国どこへでも足を運び直接エールを送る。応援歌を歌えるのはもちろんデータを集め選手情報に詳しいカープ女子もいる。

 今年幾度となく行われたカープのイベント。「前田智徳さんや緒方孝市さんの全盛期から大ファンで一人で参加しました」というお母さん世代のカープ女子の姿が目立っていたのも大きな特徴だ。偉大な先輩方の野球を受け継ぐ若鯉たちに、赤ヘル黄金期と呼ばれていたころのような最強軍団復活を託しエールを送っているのだ。

 一方、カープ女子の定義が難しいと感じることもある。

「選手がイケメンだから最近ファンになった」

「物心ついたときからカープが生活の一部で、良いときも悪いときもすべて見ているから活躍したときの喜びは尋常じゃない」

 カープに思いを馳せた年月や送る視線の角度は、まったく異なったものである。ただ、共通して言えるのは「カープが好き」ということ。元祖カープ女子とも言われる女優の秋野暢子さんは、かつて次のように語っていた。

「カープは最後まで勝負を捨てないというか、シブといんですよね。“勝とう”という気持ちが伝わってくる。こりゃ応援のしがいがあるなと思ってファンになりました」

 ただ若くてかっこいい人が好きならば、カープの選手でなくてもその対象はいるはずだ。人間味あふれるプレーで魅せてくれるなど、チームもファンも家族のように温かいカープに一度心を奪われると虜になる。幅広い年齢層で、圧倒的な熱を持つカープ女子がチームに勢いをもたらしたことが一層の注目につながったのではないか。

「カープ女子の期待はすごく感じるしモチベーションになる」

 そう発言したキクマルコンビ。赤く燃え上がる一方のカープ女子の声援を受け来年こそ悲願達成へ、期待は高まるばかりである。
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