週刊ベースボールONLINE

特集・80's〜90's 助っ人黄金時代

【伝説の助っ人インタビュー】ブライアント 「ワタナベから打ったHRは忘れない」

 

ブライアントがいなければ、黄金期を迎えた西武を倒すのは不可能だったのではないか


1988年のシーズン途中に中日から近鉄に加入して74試合で34本塁打。すさまじい勢いでホームランを量産して、優勝へあと1勝まで迫った。翌89年は自ら奇跡の4打数連続本塁打で王者西武を沈めた。「たら・れば」の話だが、このとき西武の連覇を止めていなければ、巨人のV9を超える、10連覇を達成していたかもしれないのだ。それほど強い相手を倒す原動力となった、近鉄の最強助っ人に話を聞いた。

取材・翻訳=池田晋 写真=BBM

中日で過ごした時期は日本に慣れるのに重要


──大学時代はアメフトと掛け持ちだったそうですが、最終的に野球を選んだのはなぜですか。

ブライアント (以下、B)大学2年のときにどちらかを選ばなくてはいけなくなり、オレは野球を愛していたから、野球に決めたんだ。MLBでプレーしたい、挑戦したいと思っていた。

──ドジャースでプレーしていたころ、中日へ移籍することになったきっかけを教えてください。

B 当時はそれなりに年齢を重ね、ドジャースでプレーを続けても、明るい未来が見えなかったんだ。そのころちょうど中日がドジャースの春季キャンプに来ていたから、自分から球団関係者に接触してみたんだ。中日でプレーするチャンスをうかがうためにね。日本の野球について情報を持っていたし、日本でチャンスを得られないものかと、いろいろ可能性を探っていたんだ。

──中日では一度も一軍でチャンスを与えられず、ストレスがたまったのではないですか。

B 中日での期間は大変だったとは思っていないよ。外国人枠が2つまでというルールだったから、(郭源治とゲーリーが一軍で活躍)二軍でプレーするのは仕方がないし、それは入団する前から分かっていたこと。日本の野球に慣れるためには、良い期間だったよ。初めて日本へ行き、ドラゴンズの二軍でプレーするのは素晴らしい体験だった。二軍での成績も悪くなかったしね。

中日時代、背番号49を背負ってウエスタン・リーグの試合に出場。「日本の野球に慣れるための重要な期間だった」と振り返る。当時の成績は26試合、6本塁打、打率.275、24三振



──近鉄への移籍が決まったときはうれしかったですか。

B どういう経緯で移籍が決まったのかは知らないし、この移籍が自分にとってどのような意味を持つかも、当時は理解していなかった。ただ、自分は実戦でプレーする必要があったから、近鉄の一軍でチャンスをもらえるという話だったので、喜んで移籍したよ。

──近鉄の一軍でプレーするのと、中日の二軍でプレーするのとでは、違いはありましたか。

B 違いはたくさんあったさ。二軍ではデーゲームだから、早起きして試合に備えなければいけない。ナイターの多い一軍とは大違いだったよ。もちろん、レベルの違いも大きい。一軍ではトップレベルのピッチャーと対戦することになるからね。

──1988年は近鉄に合流してから、素晴しい活躍でしたね。好調の要因は何ですか。

B 88年に好調だったことの、これといった理由は分からないよ。とにかくプレーしたい気持ちが強かったのと、いいプレーをしようと心掛けていただけさ。毎日全力で取り組んだ。チームが勝てるように一生懸命プレーしたんだ。

──シーズンの最後まで西武と優勝争いをしましたね。

B シーズンの終盤ですごく日程もタイトだし、大変だったのをよく覚えているよ。でもエキサイティングだった。ファンにとっても僕ら選手にとってもね。シーズン全体を通してもすごく面白かったね。

──88年10月19日は現在も語り継がれるロッテとのダブルヘッダーの死闘でした。あの試合についてはどのような記憶がありますか。

B オレたちが2試合とも勝たないと、優勝のチャンスがないことは理解していた。引き分けで優勝を逃したのはただ、ただ残念だ。でも、それが現実だし、誰もあの結果について説明することなんてできないさ。チームのみんな、監督、コーチがひどく落ち込んでいたのはハッキリと覚えているよ。優勝に手が届くところまで行っていただけに、ショックも大きかった。しかし、すごくエキサイティングな経験だったし、多くのファンに大きな喜びと悲しみをもたらしただろうね。選手たちだけの出来事ではなかったと思う。

伝説の10.19 の第2試合の8回、園川一美(ロッテ)から勝ち越し本塁打。同点とされた直後の一発で勝利をつかんだと思われたが……



──その苦い経験があり、翌89年は近鉄が優勝できました。西武戦の4連続ホームランは、自分にとってどんな記憶として残っていますか。

B 一生忘れられないゲームだよ。ワタナベ(渡辺久信)から・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング