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2015甲子園特集

高校野球100年目の主役はこの男たち!

 

甲子園を沸かせる逸材たち。編集部厳選の100年目の夏を彩る主役候補たちをクローズアップ!

高橋樹也[花巻東3年/投手]


抜群の投球術で打者を翻ろう

たかはし・みきや●1997年6月21日生まれ。岩手県出身。176cm74kg。左投左打



 一関学院と花巻東による決勝は、延長13回、9対8で花巻東に軍配が上がった。試合決着までにかかった時間は3時間36分。甲子園への執念がにじみ出た一戦で、花巻東の高橋樹也は最後まで1人で投げ抜いた。

 最速は146キロだが、「調子が悪く、腕が振れなかった」と、この日の序盤は130キロ前半から中盤。それでも、3回に同点3ランを浴びてからギアチェンジした。佐々木洋監督の助言で腕の下がりを修正すると、直球のアベレージが上がり、力が戻った。走者をためてはスライダーやチェンジアップで切り抜けた。

 190球を投じ、16安打、9四死球、7奪三振。高橋は「今のままでは甲子園で勝てない。(1安打完封した)盛岡中央戦のように低めに投げて抑えたい」と甲子園での快投を誓う。地元・花巻市出身。花巻東が90年夏に出場した時の外野手で父の拓也さんから「岩手の高校野球は弱い」と聞かされてきた。それが、菊池雄星(西武)を中心に09年春に準優勝。岩手の高校野球を変えた同じ左腕にあこがれを抱き、練習を重ねてきた。「目標は日本一。全力で戦いたい」。かつて雄星が躍動したマウンドで、新たな歴史を作る。(文=高橋昌江)

佐藤世那投手&平沢大河内野手[仙台育英3年]


たくましさ増した投打の柱

さとう・せな●1997年6月2日生まれ。宮城県出身。180cm76kg。右投右打


ひらさわ・たいが●1997年12月24日生まれ。宮城県出身。176cm71kg。右投左打



 投打の柱が苦境を越えた。佐藤世那は冬場に痛めた右ヒジに不安を抱え、投げ込みが不足。「指先の感覚が悪く、フォームも安定しなかった」。納得いく投球がないまま迎えた準決勝。初回に連打と四球で満塁とし、押し出し四球を与え、1アウトも取れずに降板した。一夜明け、決勝。先頭打者から空振り三振を奪って落ち着くと、その後は危なげない投球でゼロを並べた。本調子でない中、決勝の先発に指名してくれた佐々木順一朗監督と仲間の心意気に応えた。

 ドラフト候補の平沢大河は宮城大会6試合でわずか3安打だった。6月上旬の東北大会初戦で受けた死球で右足小指を骨折。練習ができない期間でボールを捉える感覚が鈍った。その上、執拗な内角攻めにより、引っ張りが強くなった。それでも犠牲フライで打点を稼ぎ、決勝では左中間へ2点適時三塁打。打撃の感覚が戻り、不安は解消されていった。

 7月20日に甲子園出場が決まり、調整時間も十分。平沢が「甲子園でヒットを打ちたい。それだけです」と話せば、佐藤は「甲子園の決勝がどういうものか、味わってみたい」と意気込む。投打の柱が復調した仙台育英がセンバツ2回戦で敗退した、春の忘れ物を取りに行く。(文=高橋昌江)

原嵩[専大松戸3年/投手]


亡き母に誓う聖地での勝利

はら・しゅう●1997年12月6日生まれ。茨城県出身。185cm84kg。右投右打



 守ってはエース、打っては四番。専大松戸の原嵩が甲子園初出場を決める一打を放てた裏には、2つの役割を担っていることが挙げられる。3対3で迎えた7回裏、二死満塁。初球はスライダーでストライクを取られると、狙い球を速球1本に絞った。

「自分がピッチャーだったら、ここで1球インコースに真っすぐを投げて、次にもう1球スライダーを投げるかなと思ったので。その1球を見逃さず、素直に打ててよかった」

 投手心理を読み切ったからこそ、四番として満塁ランニング本塁打を放つことができたのだ。

 習志野との決勝では先発マウンドに上ったが、4回途中2失点で降板。持丸監督の「ピッチャーを途中で降りたんだから、今度は四番の責任を果たしてこい」という叱咤に応えた。

 昨年夏に母親がガンで逝去し、自身は千葉県大会決勝で打たれて敗戦。「あの悔しさを一生忘れてはダメ」とチームメートと繰り返し、今夏、目指していた場所にたどり着いた。

「甲子園に行くというお母さんとの約束は守りたかったので、それができて本当によかったです」

 さまざまな思いや役割を受け止め、勝負強さを増した原が大舞台に立つ。(文=中島大輔)

朝山広憲[作新学院3年/投手]


投打で存在感発揮する逸材

あさやま・ひろかず●1997年11月25日生まれ。神奈川県出身。



 3年連続での甲子園の舞台。作新学院の朝山広憲は「自分の持っている以上の力が出せる場所」と、聖地に戻ることを心待ちにしている。入学直後の1年春にエースナンバーを背負った。同年夏は背番号10で甲子園で登板し、脚光を浴びた。

 だが、体が悲鳴を上げた。今年3月の練習試合で右ヒジに痛みが走った。5月を最後に実戦登板はできなかった。ぶっつけ本番で迎えた最後の夏。「6割くらいの状態。どこまで持つか分からなかった」と言いながら、栃木大会決勝の先発マウンドを託された。ストレートの自己最速は146キロを誇るが、その日は137キロ止まり。立ち上がりから苦しい投球が続いた。4回途中4安打1失点で降板したが、攻め続ける姿勢をチームに示した。

 父・憲重さんは、83年夏にPL学園の桑田真澄清原和博の1年生、「KKコンビ」が鮮烈なデビューを飾り全国制覇を成し遂げたときの主将。持ち前のキャプテンシーで常勝軍団を束ねてきた。「勝ち続けるチームは自滅はしない」という父の教えを胸に刻み、野球に打ち込んできた。泣いても笑っても、高校野球の集大成となる最後の甲子園。投打でチームをけん引し、頂点へ導く。

柘植世那[健大高崎3年/捕手]


勝負強さ備える強肩強打の捕手

つげ・せな●1997年6月3日生まれ。群馬県出身。175cm73kg。右投右打



 3季連続の甲子園。今秋ドラフト候補に挙がる健大高崎の柘植世那は「必ず優勝したい」と頂点だけを見据えている。昨夏は2年生ながら五番に座り、4試合で8安打をマーク。全国の舞台でレベルの高い投手への対応力を見せた。ネット裏のスカウトは「高校生の捕手としては申し分ない。プロに入ってからまだまだやることは多いが、素材はいい。夏の甲子園も楽しみ」という声が聞こえるほど、評価は上昇している。

 チームは「機動破壊」を掲げ、走力を武器に勝ち上がってきた。自身は昨年と同じ五番に座るが、ポイントゲッターとしての働きが求められる。今センバツは打率・250に終わった。自分で試合を決めようと引っ張りにいく意識が強過ぎたあまり、力みから打撃フォームを崩していたことに気がついた。最後の夏を前に逆方向へ打ち返す練習を繰り返し、群馬大会決勝では2安打1打点でチームの勝利に貢献した。力を抜いて打席に立つ余裕も生まれた。

 捕手としても二塁送球は1秒9を切るほどの強肩。強肩強打の捕手は「絶対に優勝」と勲章を胸に上のステージを目指す。

加藤雅樹[早実3年/捕手]


3役こなす司令塔

かとう・まさき●1997年5月19日生まれ。東京都出身。185cm83kg。右投左打



 チームの雰囲気づくりを一番に考えている。5年ぶりに西東京を制した早実の加藤雅樹は、四番打者としてけん引しながら、主将としての働きに重点を置いている。自身の前の三番を打つのは怪物ルーキーの清宮幸太郎。メディアの注目度は勝ち上がるたびにヒートアップしている状況だが「あいつが目立っているんですけど、逆にそれを自分たちがいじっている感じ」と1年生がプレーしやすい環境をつくっている。

 もちろん、プレーでもチームの先頭に立つ。西東京大会こそノーアーチも、高校通算46本塁打を量産する長打力が魅力だが、ここぞの集中力も武器だ。決勝後の優勝インタビューでは「ずっと悔しい思いをしてきた。何としても甲子園に出たいと思ってやってきた。甲子園では勝ち進んで優勝したい」と意気込みを口にした。

 チームの課題は投手陣。エース・松本皓は準決勝の日大三戦で散発3安打完封の快投を見せたが、基本は継投での勝負となる。捕手として投手陣を支えながら「個人よりもチーム。勝ちにつながるようにやっていきたい」と話す。高校野球100年の節目の年。早実OBの王貞治氏が始球式を務める特別な大会だ。加藤、清宮との「KKコンビ」で勝ち上がってみせる。

鈴木将平外野手(2年)&堀内謙伍捕手(3年)[静岡]


全国の頂点目指す二枚看板

すずき・しょうへい●1998年5月20日生まれの17歳。173cm68kg。左投左打



ほりうち・けんご●1997年4月15日生まれの18歳。176cm80kg。右投左打



 49代表校のうち昨夏からの3季連続出場は古豪・静岡のみだ。旧制・静岡中時代の1926年夏以来となる全国制覇を狙えるだけの戦力と、経験値がそろったと言える。2年生エース右腕・村木文哉を援護する打線は、今夏の県大会6試合で53得点と圧巻の破壊力を見せた。

 上位から下位まで切れ目がない攻撃の斬り込み隊長である一番・鈴木将平は昨夏の甲子園も1年生レギュラーで出場。今夏の県大会は全6試合で安打を記録し、打率・538(26打数14安打)と打線をけん引した。今春のセンバツ準々決勝でも優勝投手の敦賀気比・平沼翔太のキレあるチェンジアップにも崩されないバットコントロール。メジャーで活躍する青木宣親にあこがれる、職人肌漂うヒットメーカーに今夏も注目だ。

 飛龍との決勝での2ランを含む3本塁打の三番・内山竣と1本塁打の五番・安本竜二との間に挟まれる不動の四番・堀内謙伍は「打てる捕手」として注目を集めている。今夏の県大会も打率5割(22打数11安打)、8打点と勝負強さを発揮。ディフェンス面も強肩でゲームの流れを変えられる存在感があり、89年ぶりの深紅の大旗を虎視眈々と見据えている。(文=岡本朋祐)

舩曳海


アマNo.1のスピードスター

ふなびき・わたる●1998年1月13日生まれ。182cm72kg。右投左打



 あるプロのスカウトがこんなことを話していた。「舩曳(海)の足は今年のアマチュア野球界では1番だよ」。一塁到達のタイムは4秒を切ることはまれではなく、出塁率の高さからすると相手捕手にとっては脅威だ。加えて今夏の県大会の初戦・智弁学園戦では2打席連続アーチを放つなど、長打力にも磨きがかかった。強力打線をけん引するトップバッターとして今夏も熱い視線が注がれる逸材。今春のセンバツでは2試合で8打数3安打だったが盗塁はなし。今夏の聖地では、名門のスピードスターがダイヤモンドを駆け抜ける。(文=沢井史)
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