戦前の予想どおりの強さを発揮して、4勝1敗と危なげなくヤクルトを下して日本一の座に輝いたソフトバンク。果たして、その強さの理由はどのような点にあったのだろうか。全戦に帯同して取材にあたった、本紙記者が総括する。 文=椎屋博幸 神宮球場での試合前の練習で、ソフトバンクの強さの一端が見えた。ブルペンで投球練習をする投手陣の球の強さ。ほとんどの投手が球速以上の威力を感じる。
グラウンドに目を向ければ、こちらも強い打球がスタンドにポンポンと飛び込んでいく。見ている方が、その迫力にクギづけになる。
柳田悠岐や
李大浩、
松田宣浩などの打撃練習はもちろんのこと、下位を打つ
今宮健太らも同じような打球を打つのだ。さらに今宮は右打ちの練習も行う。見ていると一人ひとりが目的を明確にして練習に励み、試合に臨んでいる。
もちろん、ヤクルトも同じような練習はしていたが、その迫力に、これがシーズン90勝を成し遂げ、クライマックスシリーズファイナルステージで
ロッテをスイープして勝ち上がったチームかと感心してしまった。このチームを相手に混戦セ・リーグを抜け出してきたヤクルトがどう戦うのか、という構図の日本シリーズだった。
選手一人ひとりが勝利への執念を見せて、日本一の栄冠をつかみ取ったソフトバンク
強力打線を相手にも真っ向勝負のタカ投手陣
日本シリーズ第1戦(ヤフオクドーム)。試合前のベンチ裏で記者たちがそわそわしている。「内川が骨折した」と噂になった。それは噂でなく真実で、左第八ろっ骨骨折でシリーズ絶望に。強力ソフトバンク打線の中心である四番の
内川聖一が抜けるという非常事態となった。それでも
工藤公康監督は「仕方がないこと」と次の手を打った。それが昨年の四番打者・李大浩を再び四番に座らせることだった。
第1戦の初回の打席で李大浩は二塁打を放ち、不安は払しょくした。この試合、ヤクルトはエースの
石川雅規をマウンドに送ったのだが、立ち上がりから二死満塁のピンチを招きながら、何とか抑え切った。しかし、1回裏だけで約20分以上の時間ってくる打者だが、それで打たれたとしても、構わず投げ込む。第3戦で山田に3打席連続本塁打という日本シリーズ史上初の記録を献上したが、その後は、研究に研究を重ね、残り2試合は8打数無安打、4三振とねじ伏せた。
山田が3打席連続本塁打を放った第3戦。2本目を打った後から神宮球場は異様な雰囲気に包まれ、ヤクルトに一気に流れが傾くかに思われた。その状況を一変させたのは捕手を含むソフトバンクの投手陣が第3戦後、万全の態勢を整えたからだ。結局最後までヤクルトに流れを渡すことはなかった。
ヤクルトにとって、二番の川端が自分の打撃をできなかったことも大きな敗因・・・
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