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特集・2015-16 戦力補強最前線
青木宣親、岩隈久志の新天地での役割は?

 

2015年オフから2016年の日本人メジャー・リーガーの移籍情報を掲載する。12月2日にマリナーズと1年契約で合意した青木宣親、12月6日にドジャースと3年契約を結んだ岩隈久志が新天地でどのような役割を任されるのかを予想。さらに松田宣浩前田健太の移籍先は果たして――。

2つの補強ポイントの解決を期待される青木


 今オフは比較的FA市場の動きが早く、日本人FA選手もその例に漏れない。先陣を切ったのは、10月6日にマーリンズと再契約したイチローだ。1年契約+2017年はクラブオプションという契約を結んだ。正式にFA市場が開く前に、あと65本で到達するメジャー通算3000安打に集中しやすい環境を整えた。

 引く手あまただった青木宣親も決断が早かった。古巣ジャイアンツが来季のクラブオプションを行使せずFAとなったが、パドレス、ロイヤルズ、カブスらとの争奪戦を制したのは、日本人にとってはおなじみのマリナーズだった。ジャクソンジョーンズといった上位打線を任せられる外野手をトレードで放出。「一、二番を任せられるコンタクト打者」「左翼か右翼を守れる外野手」という2つの補強ポイントを、青木は一人で解決することを期待される。今季終盤に悩まされた脳震とうからはすでに全快。1年5500万ドル+2017年の球団オプションという契約は、マリナーズにとって非常にお買い得だと言えるだろう。

マリナーズと1年契約を結び、背番号は8に決まった青木。「日本になじみがあり、学生のころからあこがれの球団。必ず(チームに)フィットすると自分にも期待しています」と抱負を語った



 就任したばかりのディポトGMは、かつてのエンゼルスGM時代から青木のプレースタイルに魅力を感じていたという。「ノリの加入で、より運動量の多い外野を築ける。安定感あるプレー、外野すべてを守れる多才さ、元気あふれるスタイルは、このチームに必要なもの」と絶賛する。守備では、レンジャーズからトレードで獲得したマーティンが中堅、スミスが右翼を守り、青木は主に正左翼手として出場するだろう。

メジャー屈指の守備力を誇る新加入のマーティンが中堅に入る見込みだ。青木は左翼手を任されることが濃厚だが、チーム状況によっては右翼を守る可能性もある。打順はマーティンと青木がリードオフマンの候補になり、カノ、クルーズといった主軸の前でチャンスメークを期待される



 ア・リーグで13位と低迷したチーム得点(656点)とチーム打率(.249)も解決の糸口が見えた。主軸のカノやクルーズの前に出塁率の高い青木が入ることで、より効果的な得点パターンが生まれる。これに一塁リンド、三塁シーガーと続く、かなり厚みのある打線になりそうだ。

 そのマリナーズとの再契約が有力と見られていた岩隈久志は、ドジャースと3年4500万ドルで基本合意に達した。マリナーズのディポトGMは「岩隈との再契約は最優先項目」と話し、事実、積極的に交渉を行ってきた。岩隈自身も慣れ親しんだシアトルに残ることを希望したが、右腕グリンキーとの再契約に失敗したドジャースが方針転換。2年2500万ドル前後と報じられたマリナーズのオファーを超える3年契約を提示して、見事に岩隈を勝ち取った。

ドジャースは19勝を挙げたグリンキーとの再契約に失敗し、以前からリストアップしていた岩隈に3年契約で4500万ドル(約54億円)の破格の条件を提示



 ドジャースの先発ローテーションは、エースのカーショーを筆頭にアンダーソン、柳賢振ら左腕が多い。先発右投手の補強が急務だっただけに、グリンキーを逃した後、メジャー4年間で安定した成績を残してきた岩隈の獲得にシフトしたのは当然のことだった。今後の補強次第だが、現時点ではカーショーに次ぐ先発2番手が予想される。



 来季35歳を迎える岩隈にとって、おそらく何よりも魅力だったのは金額よりも3年という契約年数だろう。一般に選手生命が延びているとはいえ、今回の契約がキャリア最後になる可能性はある。となれば、1年でも長く活躍の場が保証される契約のほうがいい。また、ア・リーグからナ・リーグへ移ることも、岩隈にとってプラス材料となりそうだ。新たなリーグでは初対戦の打者も多く、伝家の宝刀スプリットがこれまで以上に威力を発揮しそうだ。

 青木、岩隈と同級生の川崎宗則の去就も気になるところだが、代理人を務めるピーパー氏によると「メジャー残留を優先させて交渉中」だという。3シーズンを過ごしたブルージェイズは、二塁トラビスが2度目の肩の手術を行い、来季の開幕には間に合わない予定だ。遊撃トロウィツキーは不動だが、バックアップを含む内野手が手薄なため、川崎との再契約を望んでいるとされる。だが、これまで同様マイナー契約+メジャーキャンプ招待のオファーと見られ、メジャー契約を提示する球団があるかが焦点となりそうだ。



 今オフに新たに日本球界からメジャー移籍を目指すのは、海外FA権を取得した松田宣浩(ソフトバンク)とポスティングシステムを利用する前田健太(広島)の2人だ。松田の代理人を務めるグリーンバーグ氏は、先日行われたウィンターミーティングで「(松田は)メジャー移籍に心が傾いている」と明かした。現段階では、パドレス、ホワイトソックス、エンゼルスなどが獲得に名乗りを上げている。年内には、少なくともメジャーか、日本かの決断は下されそうだ。

 メジャー球界でも注目の前田だが、今オフはFA市場での先発投手の動きが特に早く、プライス、グリンキー、サマージャらが9000万ドルを超える大型契約を結んだ。前田獲得に必要な2000万ドルの譲渡金を払える資金を持つ球団は限られるだろう。“グリンキー資金”が残るドジャース、“岩隈資金”の残るマリナーズ、先発ローテの補強が必須のジャイアンツ、カージナルス、ブルージェイズ、レッドソックスあたりが動きそうだが、意外なダークホースが出現する可能性も否定できない。交渉期限は、アメリカ東部時間の1月8日午後5時。交渉期間を最後まで使うのか、早々に決めるのかも注目すべき点だろう。
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