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特集・熱闘プロ野球夏の陣

本誌編集長コラム『編集部25時』

 

7月30日、ソフトバンク戦[札幌ドーム]で日本ハムがサヨナラ勝ち。こっちは涼しそう?


 今週号は「イチロー3000安打達成記念特集」の予定だった。メジャー担当者Sが先週の編集会議で「来週の水曜までには達成します。大丈夫ですよ」と自信満々に言うから、連載以外のページはほぼイチロー特集で埋めていた。しかし、水曜になってもまだ打たない。このままではページに穴が空く……。私のイライラを感じたのか、Sは近くの神社に早期達成祈願にいった。「お賽銭は」と聞いたら「3000本だから30円です」と得意気な表情。「そんなはした金で願いをかなえていたら神様も身が持たんぞ」と思ったが、言わない。私は大人だ。

 木曜日、まだ打たない。週末の“天王山”日本ハム-ソフトバンク戦をメーンターゲットに企画を練り直す。“イチロー達成号”“達成直前号”の二段構えだ。しかしナイトゲームの西武戦で斎藤佑樹が打たれ、翌日3連戦初戦の金曜は有原航平も打たれて連敗。う〜ん。

 次に考えたのが、DeNAだ。筒香嘉智が打ちまくっている。すぐ球団担当に記事制作を指示したが、Sが「あすはイチローがスタメン出場らしいですよ。今度こそ決めるでしょ」と言ってきた。あと2本。決まるなら、そっちのほうが助かる。だが、土曜早朝、やはりイチローは打たない。夜には日本ハムがソフトバンクにサヨナラ勝ち。「こっちだったか」とSをジロリとにらむ。

 日本時間の日曜日早朝、やっぱりイチローは打たない。『週刊ベースボール』は、毎週日曜までの情報を集約して伝え、例外的に月曜に大イベントがあった場合、印刷所に頭を下げて、数ページだけ手配してもらっている。もう時間がない。イチロー特集は巻頭3ページのみとし、ページを構成し直した。

 あらためて表紙を誰にしようか考える。期待は15時スタートの日本ハム-ソフトバンク戦での日本ハムの勝利だ。先制したのはソフトバンクだったが、われらの大谷翔平が同点アーチ。「大谷、君が表紙だ」。結構、大きな声が出た。夏はどうしてもテンションがハイになる。夏祭り、ひと夏の恋――ああ、青春ですな。

 すぐカメラマンにメールを入れ、「表紙の可能性あり、写真を多めにサーバーにアップしてくれ」と指示(そういうシステムになっている)。試合は日本ハムの勝利でソフトバンクとのゲーム差は3となった。

 しかし、私はここで「う〜ん」とまた考える。18時から広島-DeNA戦がある。しかも、今回インタビューしている広島の岡田明丈が先発だ。「完投勝利で岡田かな。筒香がホームランを打ったら筒香もいいな」となる。隣の席に座る副編集長Kの顔が曇った。試合終了後、写真が届き、ページのレイアウトをするデザイナーに渡すことを考えると、間違いなく終電ギリギリ、いや、徹夜になるかもしれない。Kには、かわいい子どもがいる。早く帰りたいだろう。だが、私にはいないから関係ない。

 試合中盤、筒香がタイムリー二塁打で広島を引き離す。「よし、筒香が表紙だ!」と、また私。しかし、ここで広島の新井貴浩が同点タイムリー。男臭く喜びを爆発させる。「よし、勝ったら表紙はお前で決まりじゃ!」(なぜか広島弁で)と、またまた私。この暑苦しい1日を終えるには、このくらい暑苦しいシーンじゃなきゃいかんじゃろ。試合はそのままカープ勝利。22時30分、表紙の編集作業が始まる。

 ただ、興奮が冷めると私の中でまた違う思いが浮かぶ。「イチローの次の試合が日本時間午前2時からだ。3000本打ったら表紙を変えよう!」。それを聞いてKがふっとため息をつく。これでデザイナー、K、Sの徹夜が決定した(私も)。なお、これはイチロー特集で空けていたページを埋めることができず、やむなく書いた話ではありません。(編集長I。一部フィクション)
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