超一流に上り詰めた選手にはそれぞれの“作法”がある。史上20人目の通算400本塁打を達成した中村剛也。ホームランを極めたキングの思考は非常に独特だ。 取材・構成=小林光男 写真=大泉謙也(インタビュー)、BBM 常に変わらないスイング
メモリアルアーチを劇的な一発で飾った。7月19日のオリックス戦(メットライフ)。同点で迎えた延長11回、中村剛也が増井浩俊の高めのフォークをとらえると打球は左翼席へ消えていった。チームに勝利を呼び込むサヨナラ弾は史上20人目の通算400本塁打。その瞬間、スタジアムのボルテージは最高潮に高まった。 ──通算400号を記録した際、現役最後の打席ではないから「思い出の1本はない」と話していました。
中村 400本に関しても過去のことです。時間が経った今でも何とも思わない。やっぱり、まだ現役でプレーしていますから。「400本打ったんだな」というくらいですよ。
──昨年は6月上旬まで本塁打ゼロ。引退が頭をよぎるくらい追い詰められたそうですが、そこから復活しました。
中村 昨年だけではなく、その前からの2、3年は思うように打てない日々が続いていました。結果が出ない経験はないほうがいいですけど、絶対にどんな選手でもうまくいかない時期はあるでしょうから。まあ、いろいろと打撃に関して見直すことができたので、非常にいい経験だったと思います。
──バットを940グラムから890グラムと軽くし、長さは33.5インチから34インチへ。
中村 それに構えたときに腕を動かして、「静」から「動」ではなく、「動」から「動」にしたこともそうです。バッティングの根本的な部分は変わっていませんが、ちょっとしたマイナーチェンジ。そこが昨年の途中からうまくできたので、今年もその流れで取り組んでいます。まあまあ、いい感じですね。
昨年は結局、7月8本塁打、8月12本塁打とよみがえり、シーズン28本塁打をマーク。今年は開幕からコンスタントに本塁打が飛び出し、400号は15本目。節目の記録を達成した後も7月24日の楽天戦(楽天生命パーク)から4試合連続で5発を放つなどペースを上げて通算405本塁打とし、阿部慎之助(巨人)を抜き、現役トップに立つ。歴代では17位だが、本塁打率は13.74で4位とアーチストぶりが際立つ。 ──同僚の
山川穂高選手は中村選手のスイングに関して「全部タイミングが合っているように見えるのがすごい。カーブだろうが、真っすぐだろうが、全部同じスイングをする」と、技術の高さを口にしています。
中村 心掛けているというより、自然とそういうふうになっちゃうので(笑)。
──山川選手は逆に体勢を崩しながらもスタンドインさせます。
中村 僕にはできない。器用なのか、不器用なのか分からないですけどね。
──以前、山川選手には「10回続けて同じ素振りができればいい」という助言も送ったそうですね。
中村 いまはたいしてやっていないんですけどね(笑)。でも、小さいときからずっと素振りはしてきました。もちろん、ただ振るではなく、自分でしっかりと考えて。素振りはね、全打席全球、ホームランできる。相手投手も明確にイメージして、ホームランを思い描いた素振りはよくやっていましたよ。
──2018年にブレークした巨人の
岡本和真選手と17年末に自主トレを行った際、「息の長い、品のある打球を打とう」と助言していたのも印象的でした。
中村 そのとき、岡本は打撃練習でラインドライブの打球が多かったんです。だから・・・
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