「あっ、月見草……」と一人の老婆がつぶやく。それに主人公の若者はハッと胸をうたれる。多感な若者が少し人生を裏返しに見つめ始めたときに太宰治の裏返しの「生まれてすいません」という人生感にのめりこむ……。
若いトラ番記者のころ、富士山の裏側の甲府を旅した。その“裏側からみる富士”がみたくて、わざわざ太宰という作家が逗留したちいさな温泉宿の、彼がそこで小説を書いた部屋に泊まってみた。
別に理由はない。ただ『富嶽百景』のなかに青年が一人……バスのなかは富士山の輝くような威容が……と、ふとみるとみんなとは逆の山影の道端に小さな花がポツンとさいている。それをみて老婆がつぶやく。「あ、月見草……」。
ノムさんにちょいと聞いたのだが「あのセリフは・・・
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