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正しい投手の育て方

久保康生(元近鉄、阪神、ソフトバンクコーチ)がコーチとして見せた“魔改造”と呼ばれる手腕「勇気づけ、指導し、模範となること」

 

日本球界3球団で数々の投手を育て上げた。若手の才能を引き出し台頭させたかと思えば、伸び悩む選手にきっかけを与えて見事なまでに復活させることも。一風変わった斬新な練習道具も、根拠があるからこそ選手たちに刺さる。選手の変貌ぶりから“魔改造”という異名も付いた独創的な育成論、指導方法に込められた思いを、久保康生氏に語ってもらった。

1997年に現役を引退すると、翌年からコーチに就任。以降。NPBでは22年にわたって“後輩たち”の指導を行ってきた[写真は2005年の阪神一軍投手コーチ時代]


原理原則を理解させる


 指導するにあたっては、まずは“見る”ことでしょうね。「この選手、どこでうまくいかないんだろうな」という気になるポイントを探すべく、自分なりの視点でしっかり見ていくことが重要となります。そのあとは、何も触らない状態で実戦をさせて、実戦の中であらためて気になるポイントがどうかを確かめる。そこでやっぱり気になるようなら、何が問題かをはっきり伝えます。選手に“興味”を持たせるんです。

 見るにあたっても、投げているところだけではありません。最初はウォーミングアップから。その時点で気になる選手は気になりますよ。選手1人ひとりが私に対していろいろな“信号”を出してくるので、そこをしっかりキャッチできるように常にアンテナを張り巡らせる。試合でのピッチングにつながるまで、どういう流れで状態をもってきているのかなど、観察していないと選手に指摘することはできません。もちろん1人では限界があるので、ほかの人から伝え聞く情報もあります。それこそ生活態度なんかも。この子は部屋が汚いとか、そういうところもピッチングに影響が出たりするんです。

 選手に関する情報があればあるだけ、指導もしやすくなります。悩んでいる選手がいたときに「どう接していったらいいのか」「どういう部分から気づかせていったらいいのか」、アプローチの指針になるのが情報です。情報を基に練習メニューや段取りを組んでいくわけです。

 実は、私の指導法については私自身も不思議なところもあって……。ただ、振り返ってみると、プロ野球3球団で選手と向き合っていく中でたくさんの選手が成功してくれた。そこは大きいですね。

 また、明確に言えるところでは『原理原則』です。物事の原理原則を、しっかり選手に伝えられるか。原理原則の上に立って、選手が考えて、選手が作っていく。だから、「原理はこうなっているよ」というところを言い切れないとコーチではないと思うんですよ。コーチがそこをしっかり伝えてあげることで、選手が「だったらこうしてみようか」と、ようやく自分から動き始めるんです。

 原理原則というのは・・・

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