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高校野球 地方大会 SIDE STORY 熱きそれぞれの思い

3年ぶりの「美爆音」 習志野高吹奏楽部が示した学校応援の意義

 

高校野球とブラバン応援は運命共同体だ。各地方大会では、条件付きながら演奏が許可。千葉大会では名門吹奏楽部が、3年ぶりに伝統のサウンドを披露し、スタンドを沸かせた。
取材・文=岡本朋祐 写真=矢野寿明

レパートリーが多い習志野高のブラバン応援を見るために、球場に足を運ぶファンも少なくない。この日はテレビ局の密着取材のほか、各報道機関も「3年ぶりに」注目していた


 千葉大会のメーン会場・ZOZOマリンスタジアムの三塁側場外はピリピリとした空気に包まれていた。7月12日。習志野高吹奏楽部は、第3試合に組まれた市川高との初戦(2回戦)に備えてスタンバイ。球場入場前からすでに、活動は始まっている。海老澤博顧問は言う。

「部員186人が一斉に動くので、スタンドに入れば、手際良く準備しないといけない。春高など、バレーボールの場合は開始までのインタバルが短いので大変ですが、野球は30分ほどありますので、何とか間に合う。とはいえ、生徒たちはこの実戦を一度も経験していない。知っているのは、私たち顧問だけ。不安もありますが、3年ぶりに、この舞台で戻ってこられたことに、ワクワクしています」

 吹奏楽部は1961年に同好会として発足し、翌62年に正式な部として認められた。同校オリジナルの「レッツゴー習志野」はエース・小川淳司(ヤクルトGM)を擁して夏2度目の全国制覇を遂げた75年に誕生。同応援歌に象徴される「美爆音」が、高校野球のブラバン応援をリードしてきた。コンクール全国大会、マーチング全国大会、アンサンブルコンテスト全国大会における金賞の常連校は「東の横綱」と呼ばれる。全校生徒は約960人。コロナ禍前は部員210人以上で「5人に1人は吹奏楽部」と、学校トップの人気を誇る部活動だ。

 野球部は2019年春のセンバツ準優勝で、夏の甲子園も2回戦進出。同秋も県大会を制し関東大会8強。ところが、翌20年からは新型コロナウイルスに翻弄されてきた。19年夏のアルプス応援を経験した当時の1年生は結局、2、3年時は応援できなかった。

「仮に20年春のセンバツに選んでいただければ(落選で関東の補欠1位校)、新たに挑戦しようと考えていたんですが……。コロナ元年(20年)は、ほとんどの行事が中止。周りの方が動いてくださり、生徒たちの発表の場を設けていただきましたが、ジレンマがあったのは事実です」(海老澤顧問)

 学校2階の音楽ホールは三密回避のため、パートごとに分かれて練習し、感染者が確認されれば活動ストップ。吹奏楽は屋内で動くことがメーンで、制約が多い。20年は各コンクールが中止の中でも、関係者の熱意で、毎年11月恒例の定期演奏会は入場者数を絞り、有観客で歴史をつなげることができた。感染症と共存する新たな日常となった昨年はマーチング、合奏コンクール、全国吹奏楽コンクールと3大会でいずれも金賞を受賞した。厳しい状況下でも、伝統の力を発揮し、習志野サウンドを継承。人を喜ばせる演奏はできていたが、消化不良があったという。

「スポーツ応援にこそ、醍醐味がある。人の頑張りをバックアップできる喜びは、何物にも代え難い財産。この2年、演奏の場があっても・・・

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