もしも大谷翔平が三冠王を獲得したら、20世紀以降のア・リーグ、ナ・リーグのシステムでは14人目(16度目)の快挙となる。MLBにおける三冠王とは、どのくらい価値があることなのだろうか。 文=伊藤茂樹(駒沢大学教授) 写真=Getty Images 2012年のミゲル・カブレラ[タイガース]は最近50年で唯一の三冠王なので希少価値が高い
日本よりも少ないメジャーの三冠王
メジャー・リーグで三冠王が生まれる頻度は、日本プロ野球よりずっと少ない。
日本では1リーグ時代の1938年秋の
中島治康以降8人が12度達成しているのに対して、MLBでは1878年以降15人の打者が17度記録しているが、このうち1912年のハイニー・ジマーマンまでの5度(5人)はいわゆる「飛ばないボール」の時代だった。ホームランは最多で14本にとどまり、4本とか9本の本塁打王もいる。ベーブ・ルースの台頭までホームランは主要な記録ではなかったのだ。
そのため、今日的な意味での三冠王は1922年のロジャース・ホーンスビー(42本塁打、152打点、打率.401)以降の12度(10人)と言っていいだろう。NPBでも中島はわずか40試合の秋季リーグ戦での三冠王なので除外すると、1965年の
野村克也以後、昨年の
村上宗隆までの11度(7人)となる。つまり、メジャーでは約100年の間に12度しか生まれておらず、約60年間に11度のNPBより遥かに珍しい記録ということになる。
1967年のカール・ヤストレムスキーから2012年のミゲル・カブレラまでは44年間、三冠王が出なかった。
この背景には、野球の「分業化」が進んで長打と打率の両方を打てる打者が減ったことがあるだろう。現代野球では特に本塁打が重視され、打率が低かったり足が遅かったり守備が下手だったりしてもホームランバッターは大事にされる。
もう一つ、相次ぐ球団拡張によりチームと選手の数が増え・・・
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