貧打にあえぐドラゴンズに救世主のごとくやって来た。打点王3度の実績を持ち出すまでもなく、その勝負強さと大砲としての存在感は誰もが認めるところだ。「レギュラーが確約されたとは思っていない」と謙虚に語るが、この男のバットがチーム浮上のカギを握っているのは間違いない。 取材・構成=牧野正 写真=宮原和也、橋田ダワー 野球をやめる覚悟で
中日の春季キャンプはさながら“中田フィーバー”だった。ファンだけでなく、報道陣も数多く押し寄せ、中田翔の動きを追った。キャンプインに合わせて金髪で決めてきたが、相手を寄せ付けない威圧感はない。ファンが渡したサイン色紙にペンを走らせ、報道陣のカメラに笑顔で応えた。オプトアウト権を行使して、巨人との3年契約を破棄して自由契約を自ら選んだ。出場機会を求めての決断だったが、獲得に乗り出す球団があるかは半信半疑。真っ先に動いてくれた中日への入団が決まり、再びグラウンドに立つ。自分に求められている役割は誰よりもよく分かっているし、その期待に応える自信もあるのだ。 ──キャンプではすごい人気ですね。想定内ですか?
中田 どうなんですかね。もう十何年もやってきて、今さら“中田フィーバー”というのもあれなんですけど、たくさんのファンに声を掛けていただいて、ありがたいなと思っています。
──「ドラゴンズの中田」もサマになってきました。背番号6も似合っています。
中田 それは皆さんがどう感じるかなんでね。6番は僕の高校時代の先輩(大阪桐蔭高の
平田良介)を含め、ドラゴンズの偉大な先輩方が着けてきた番号ですから。個人的にも
日本ハムで10年以上にわたって着けてきた背番号でもあるので、そこは素直にうれしい気持ちでいます。先輩はちょくちょく連絡をくれますよ。
──チームの中では何と呼ばれていますか。「中田さん」ですか。
中田 いや「翔さん」が多いかな。でもそこは少し抵抗があるんですよね。日本ハムでも巨人でも「大将」と呼ばれていましたから。あだ名のような感じでね。そこはまだ少し慣れない部分。「大将」と呼んでくれるのは……チャミ(
宇佐見真吾の愛称)ぐらい。まあ、一緒に日本ハムでやっていましたから。
──あらためて巨人退団のことをお聞きしますが、大きな決断だったと思います。一番の決め手は何でしたか。
中田 一塁は和真(
岡本和真)で固定するということでしたので、そこからいろいろと考えました。和真はジャイアンツを代表する打者であり、一年を通して四番を打たなければならない打者なのは分かりますが、でも一方で自分の立場を考えたとき、やはり自分も試合に出たい、打席に立ちたいという気持ちが強かったですし、その中でまだできるという自信もありました。僕にとってもジャイアンツは大切な球団でしたから、そこは最後の最後まで本当に悩みました。
──オプトアウト権を行使して自由契約を選んだわけですが、どこの球団からもオファーがないかもしれないという不安はありませんでしたか。
中田 それはもちろん考えました。不安というより怖さですよね。でもそこは腹をくくりました。もしどこもなければすぐに仕事を探そうと。家族もいるから働かないと。どこもなければきれいさっぱり野球はやめていたと思います。
──巨人とは2022年オフに3年契約を結び、たとえ試合に出なくても残り2年の年俸(推定3億円)は保証されていました。リスクを背負ってみすみす手放すことはないとは思いませんでしたか。
中田 確かに(周りでは)そういう声のほうが大きかったですよ。いるだけで大金が手に入るわけですから。でも・・・
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