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現在・過去・未来 四番のすべて

<CLOSE UP>決意と覚悟のバットマン 新たな船出

 

重責は計り知れない。一振りが勝敗に直結することも多い四番打者は相手投手だけでなく自らとも戦い続ける。チームの浮沈を大きく左右する男たちの決意と覚悟──。4人のバットマンの新たな船出に迫る。

阪神・大山悠輔 笑顔をもう一度


最下位も経験しながら昨年四番としてチームを日本一に導いた。それまでの苦労とファンの声援を受け、リーグ優勝後、ホッとしたときに涙があふれてきた[写真=早浪章弘]


 屈辱は、いつまでも心に刻み込まれている。2018年、金本知憲監督の下、17年ぶりの最下位。順位がほぼ確定した9月29日の中日戦(ナゴヤドーム)で、同年初めて四番に起用され、シーズン終了までその座を任された。オフに金本監督は退任。自らをドラフトで1位指名してくれた指揮官を男にできなかった。悔しさ、勝ちたい気持ちが四番像をつくり、昨年は日本一へ導いた。頂点に立ったことで、気が付いたことがあった。

「明日しっかり勝てるようにやっていくしかない。反省と準備をしっかりして明日を迎えたい」

 決して多くを語らない。口を真一文字に結び、心の中にある本音をぐっと抑え込み、前を向く言葉しか発しない。前年覇者として迎えた24年。巨人との開幕戦(東京ドーム)で3三振を喫し、チームも敗戦(0対4)した。下半身の張りによりオープン戦終盤を欠場。必死の思いで開幕に間に合わせたが、実際に結果が出なかった。

「悠輔が打てずに試合に負けたらみんなが納得しますから」と、もうひとりのチームリーダー・近本光司が言えば、三番・森下翔太も同じ思いを明かす。昨年の猛虎打線は、責任感の強い大山の背中を見ながら、つないで得点を重ねていった。生え抜きではミスタータイガース・掛布雅之以来38年ぶりに全試合四番として打席に立ち、チームを日本一に導いた。

 ヤクルト村上宗隆や巨人の岡本和真のような派手な四番ではない。試合状況によって粘りの打撃を見せる。80年代後半から西武の黄金時代で四番に座った清原和博のように、試合の流れを読み、右打ちも見せる。すべてはチームの勝利のため。二度と最下位の経験はしたくないという思いと、阪神ファンを喜ばせたいという気持ちがあるからだ。

 だからこそ、しっかりと調整し、開幕に間に合わせた。球団初の連覇に向け私欲を捨てる。昨秋の日本シリーズ第4戦でサヨナラ打を打ったあと「歓声が今日の勝利を呼んでくれた」と語り、ファンの歓声が自分の背中を押してくれることも知った。もう一度、あの歓喜を味わうために──。2年連続全試合で四番に座り、ファンとともに味わう歓喜を目指してバットで答えを出していく。

PROFILE
大山悠輔/おおやま・ゆうすけ●1994年12月19日生まれ=30歳。茨城県出身。181cm94kg。右投右打。つくば秀英高-白鴎大-阪神17[1]=8年。

巨人・岡本和真 “らしくない”熱き思い


 6年連続で30本塁打をクリアして3度の本塁打王、2度の打点王に輝いてきた。誰の目から見ても、四番に恥じない成績。だが・・・

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