週刊ベースボールONLINE

球界インサイドレポート

開幕ダッシュで首位奪取!日ハム好調の要因とは?

 

開幕から16試合を11勝5敗のハイペースで首位に立つ北海道日本ハム。その好調の要因はどこにあるのか、探っていく。



平均得点4.7とよくつながる打線


 よく点が取れているのは大きなポイントだ。16試合で75得点は両リーグトップで、1試合に平均すると約4.7点を奪っていることになる。「4点以内に抑えれば勝てる」と先発投手は楽な気持ちでマウンドに上がれるだろう。また、相手に先制されても、2、3点なら引っくり返せるという余裕を持って戦えるのは、攻守において良いプレーが生まれやすいのではないか。

陽岱鋼、大野が離脱も若手が台頭


 では、最初に好調な打線から分析する。16試合終了時点で、田中賢介近藤健介中島卓也と3人が2割9分超えの打率を残している。打線の上位、下位に関係なく好調な選手がいるため、打線がよくつながっているのだ。また、打率が2割台前半の中田翔レアードも、15打点、9打点と勝負強い打撃で、多くの得点をたたき出している。

中田のあとに打撃のいいハーミッダが控えているため、相手も簡単に中田を歩かせられない。開幕から6試合連続安打を記録した



 唯一の不安は陽岱鋼の状態か。昨季もクライマックス・シリーズでほかの選手たちが躍動する中、一人深刻な不振に陥り、チームの勢いに乗れなかった。もし、陽が本来の調子であれば、福岡ソフトバンクを倒して日本シリーズに出場できていたはず、という声も聞かれる。その陽はオープン戦から当たりが止まっており、開幕後も不調で打率1割台。その上、太ももの裏を痛め、4月12日に登録を抹消された。ただ、陽の抹消により、外野のポジションを争うと思われていた谷口雄也岡大海らに多くのチャンスが与えられた。谷口は3割と結果を残している。今後も若い選手が実戦経験を得て切磋琢磨(せっさたくま)しながら成長すれば、さらに層が厚くなり、チーム力は上がるはずだ。

 また、昨季の第1捕手の大野奨太、第2捕手の市川友也がともに負傷のために長期欠場することが大きな懸念事項になると思われていた。だが、この危機も21歳の近藤健介と19歳の石川亮という若い2人の健闘により、大きな問題となっていない。近藤は3割2厘、石川は3割と打率を残すなど、“打てる捕手”が誕生したことにより、打線に厚みが加わっている。2人の若い捕手がこの勢いのまま試合に出続けて経験を積めば、大きな力となるはずだ。昨季の大野が打率1割台だったことを考えれば、復帰したとしても、正捕手の座を取り戻せるかどうか、分からない。捕手陣の競争激化も戦い方に幅を広げてくれる。

 大野は4月12日に行われた2軍のフューチャーズ戦(鎌ケ谷)でようやく実戦で守りに就き、2打数2安打と打撃でも結果を残した。若い2人の活躍に刺激を受けていることは間違いない。1軍の試合でフルに出場できる状態になったとき、どのように起用されるのか、栗山英樹監督の手腕が注目される。

大谷が7回無失点で3連勝
先発投手陣の状態も上向き


 開幕から爆発していた打線も徐々に落ち着いてきており、シーズンを通してここまでのような得点力は期待できなくなるだろう。特に相手の先発が良い状態のときは、簡単に点を取ることはできない。そのような試合状況になったとき、選手たちが相手投手をどのように苦しめ、わずかなスキから得点を奪うことが、勝利をつかむためには不可欠になる。ただ、今季はそのような難しい状況からでも得点を奪い、勝利につなげた好例がある。

 3日のオリックス戦(京セラドーム大阪)で、相手の先発ディクソンは立ち上がりこそ2四球を出すなど不安定だったが、2回から6回までヒット1本に抑えられ、初回に背負った1点のビハインドを逆転するのは非常に難しいと思われた。だが、7回に先頭のハーミッダがライトスタンドへ運び、一振りで同点にする。続くレアードが四球で歩き、近藤が送るが、次の谷口が倒れ、2死二塁。ここで中島の三塁への強烈な当たりが相手のミスを誘い、勝ち越し。続く西川遥輝は、この日チーム4本目となるヒットで2点差とし、好投を続けていた先発・上沢直之に今季初勝利をもたらした。相手投手が良いときに、このように泥臭く点を奪う、粘り強い戦いができれば、劣勢の試合でも勝利をつかむ確率は高まる。試合中盤から終盤にかけての粘り強さは昨季の終盤から続く、大きな強みでもある。

 この粘り強い戦いをするのに欠かせないのが、先発陣のゲームメーク能力だ。12日のソフトバンク戦(熊本)を7回無失点で抑えて開幕3連勝とした大谷翔平は、立ち上がりこそまだ不安を残すものの、試合を重ねるごとに好調時の姿に近づいている。2012年のMVP左腕・吉川光夫が復活し、3連勝スタートを切ったのも大きなポイントだ。

昨季は一度しかなかった大谷と近藤のバッテリーだが、今季はこのコンビですでに3連勝。大谷自身の調子も試合を重ねるごとに上向いている



 上沢は4月11日(鹿児島)のソフトバンク戦に敗れたものの、防御率は1.20と抜群の安定感を見せており、メンドーサ、武田勝も白星をマークしている。上記の5人は今季のローテーションに定着しそうだ。

 ここに負傷離脱中の浦野博司とガラテ、今季は2軍調整が続く中村勝木佐貫洋、徐々に投球数を増やしている有原航平などが台頭すれば、1シーズンを戦える陣容が完成する。

セットアッパーの座を奪った鍵谷


 リリーフ陣は昨季と顔ぶれが変わっているものの、昨季同様に安定感抜群でチームのストロングポイントになっている。昨季素晴らしい働きを見せたクロッタが打ち込まれて信頼を失っているが、鍵谷陽平が7試合に投げて無失点を続け、セットアッパーの地位を奪い取った。谷元圭介宮西尚生は昨季同様、確実につなぐことができ、ストッパーに定着した増井浩俊も期待に応えている。矢貫俊之が復活の兆しを見せているのも明るいニュースだ。

開幕13試合で半分以上の7試合登板とフル回転の谷元。強力なリリーフ陣の中でも、その存在価値はひと際光っている



 昨季のように、左腕不足で宮西にかかる負担が大きくなる可能性があるため、ガラテ、瀬川隼郎の新戦力の台頭、石井裕也齊藤勝の奮起に期待がかかるところだ。また、昨季の終盤に好投した白村明弘が出遅れているが、力強い速球を武器に、リードの場面で起用されるよう、首脳陣の信頼を勝ち取ることが期待される。

田中賢介、レアードの加入で安定している内野守備


 もう一つ大事なポイントは守備だ。昨季144試合でリーグワーストの84失策だったが、今季は16試合で失策6と、ここまでは守備がまずまず安定している。

 ただ、11日のソフトバンク戦のように、ミスが続き失点して負けるパターンは昨季何度も見られ、今後なくさなければならない。先発の上沢は走者を出しながらも踏ん張り、6回まで1対1で進み、7回裏を迎えた。先頭の中村晃を四球で歩かせ、本多のバントを処理した捕手の近藤は二塁封殺を狙ったが送球がそれてセーフにしてしまう。続く柳田のファーストゴロを中田がトンネルし、ノーヒットで勝ち越され、さらに内川、松田にもタイムリーを許し、敗れた。

 田中が二塁に復帰して内野守備に定評のある中島を遊撃に固定できたことで、昨季不安定だった二遊間の守備は大幅に改善された。また、併殺を取れる場面では確実に取って投手を助けるなど、記録に残らないミスも大幅に減っている。だが、連勝が7で止まってしまったソフトバンク戦のように、1試合で3つもエラーが出てしまうと、いくら投手が踏ん張っても、守り切れなくなる。レアードの加入で三塁の守備も安定しているため、あとは選手たちが集中力を保ち、ミスを続けないことだ。僅差の勝負を勝ち切るのに、ミスが続くことは命とりになってしまう。

堅実な二塁守備と、高い打撃技術でチームに大きなプラスをもたらす田中賢。基本は二番だが、陽の欠場時には三番にも座る



 ここまでは、若いチームの良さでもある勢いに乗って、勝利を重ねている。だが、今後はなかなか勝てない時期、連敗が続くなど苦しい時期は長いペナントレースで必ずやってくるもの。そのときをどう乗り越えるかが、チームが優勝争いに加われるかどうかを左右するのではないか。経験豊かな田中も「チームが苦しくなったときにこそ、何か行動を起こしてみんなを助けたい」と語っている。数少ないベテランの力が必要になる時期は必ず来るだろう。

「春先と秋口を比べてみんなが爆発して別の選手に見える可能性がある。だから、今年のウチは抜群に面白い」と大きな期待を寄せる栗山監督



 また、4年目を迎えた栗山英樹監督がどうチームのかじ取りをするかも、今後の戦いを左右するだろう。4月2日の千葉ロッテ戦(QVCマリン)のように、序盤に8点リードしながら、一時同点に追いつかれてしまう展開には、絶対に持ち込ませてはならない。ただ、試合後の栗山監督の厳しい表情を見れば、あのような過ちは繰り返さないはず。若く、勢いのあるチームを首脳陣がいかに良い方向へ導けるかにも注目だ。
HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング