仕事への限界が見えたら人はやる気をなくす。巨人時代、立ちはだかるカベに押し返され、第2の人生に選んだ職業では、自分の行く末に疑問を感じた。そして今、不動産の訪問営業で街中を歩きまわる毎日だ。厳しさはこれまでと何も変わらない。だが、和田凌太は「会社のために頑張りたい」とはっきりと言い切る。その先に笑顔に満たされる場所があることに気が付いたからだ。そして今、その道にまい進している。 取材・文=椎屋博幸、写真=BBM 朝礼を終え、笑顔でデスクに帰る社員たち。社長が個々に声をかけ、笑顔がさらに広がる。いつも笑顔で満たされた空間に和田凌太は身を置いている。
「初めて大橋(孝行)社長に、お会いしたときにこの会社に入りたいな、と思いました。社長と社員の方々の関係を見ていてすごくいい雰囲気でしたし、社内が明るかったんです」
日本リアライズ株式会社は分譲マンションを売る不動産会社だ。賃貸住宅の住人に訪問販売を行っている。「住宅を買う」。一般サラリーマンにとって一大イベント。買う側は決断するまでに慎重に慎重を期す。その中で信頼を得て、住居を売っていく仕事。すごくつらい営業だと想像できる。
「すごく厳しい部分もあります。簡単に断わられることも多いです。ただ、契約が決まって、お客様と握手をするときは、鳥肌が立つくらい感動しますし、笑顔を見ると、心から『良かったなあ』と思います」
4年間野球だけに打ち込んだ日々、そして焼き肉店の店長に
広島工高時代、地元の大企業・マツダの下請け会社に就職が決まりかけていた。しかし、ドラフト指名の可能性が出てきたということで、ドラフト志望届を提出。和田自身はドラフト当日まで半信半疑だったが、巨人から育成での指名を受けた。もちろん、プロ野球はずっと夢だった。和田は迷うことなく東京へ向かう。大型の内野手は、二軍の試合に出場し続けた。だが、巨大戦力の中で支配下登録を勝ち取ることができず4年目が過ぎた。
「4年目は二軍で多くの試合(78試合)に出ましたが、その中で支配下になれない難しさも理解していたので、悔いの残らないシーズンにしようと思いました」
和田の予想どおり戦力外通告を受けた。高卒で右も左も分からず、4年間野球だけに打ち込んだ日々。社会にどういう仕事があるのかも分からなかった。ただ、働かなければ生活できない。そこで知り合いが経営している焼き肉店で働くことになった。
その焼き肉店では半年もすると店長になり、仕入れから接客まですべてをこなした。本来人見知りをする性格で、話をすることも苦手だった。しかし、接客をしなければいけない状況で、人と話すことが苦にならなくなる。小さいころから人間観察をすることが好きだったという和田は、接客の中で、お客さんが何を考えているのか知りたいと思うようになり、接客自体が楽しくなった。
しかし、その焼き肉店の労働環境や福利厚生に疑問を感じだし・・・
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