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緊急特集・本誌編集長コラム
どうなる巨人!?深まる闇はいつ晴れるのか

 

「首脳陣が責任を取って辞任するということをもちまして3月25日の公式戦(開幕戦)は参加させていただきたいと思います」悄然たる表情を浮かべた巨人・久保博社長が絞り出すように言った。ほんの少しの甘えと油断が悪徳をはびこらせ、それが連鎖し拡大、ついには組織を食い荒らす。1936年にスタートし、多くのファンに愛され、その応援で繁栄してきたのが、プロ野球であり、球界の盟主を自負する巨人軍だった。それが開幕前に、こんな言葉を発せざるを得ないとは……。(事実関係は3月11日時点)
本誌編集長・井口英規

3月9日の会見で高木京介。ずっと涙を浮かべていた


突然の会見


 3月8日、19時40分から会見を開きます――。球団から突然のメールを受け、カメラマンと読売新聞本社に向かう。予想していたとおり、賭博事件の“続編”だった。

 会見の冒頭、久保博球団社長から左腕投手・高木京介(1989年生まれ。プロフィール別記)の野球賭博への関与が明らかにされた。中継ぎとして一軍に定着し、入団以来139試合無敗の男。巨人担当記者によれば、非常にマジメな性格で、今回のような事件を引き起こすタイプとはとても思えない、ということだ。

 賭博事件の表面化は、昨年10月5日、福田聡志投手(83年生まれ。一軍では151試合登板)に野球賭博行為の疑いがあるとして巨人がNPBに告発してからだ。最初はメジャー・リーグや高校野球で、という話だったのが、巨人戦を含めて賭けていたことが分かり、さらに衝撃が広がった。その後、笠原将生投手(91年生まれ。一軍で60試合登板)、松本竜也投手(93年生まれ。一軍登板なし)の野球賭博への関与が確認され、11月にはNPBが3人を無期失格処分、巨人が3人の契約を解除した。この際、NPBは3人を今回の“賭博システム”に誘い、仲介をしていた大学院生Aと飲食店経営のBを野球賭博常習者と認定している。ただ、その後の調査では新たなる違反者は発覚せず、事態は収束したかに思えた。

 今回の一件は、2月29日、賭博問題を最初に伝えたメディアでもある『週刊文春』の記者が、巨人の球団職員に電話で高木の件を質問したことから始まった。そこから球団は高木の調査を始めたが、当初は「一人当たりの賭け金の上限があるということで、笠原さんに名義を貸しただけ。笠原さんが自分の名前で賭博を行っていただけです」と関与を否定。球団は任意で複数のスマホを提出させたが、証拠をつかむことはできなかった。

 しかし、8日の朝になって高木から賭博の事実を認める電話があった。夫人、両親とも話し、これ以上隠し通すことができないと思った、という。

「2014年4月ごろ、笠原さんから野球賭博をもちかけられ、軽い気持ちで1試合10万から15万くらいを3、4回賭け、全部で50万程度負けました。試合に関しては笠原さんが賭けた試合に乗っかる形だったので、はっきり記憶していません」(高木)

 3選手の事件発覚後は、いつ自分もばれるのかビクビクしていたというが、笠原の背後にいて、今回の“肝”であるBから「食事を賭けていたと言え」「名義だけ貸したと言え」「大丈夫だからしらを切り通せ」と何度も電話が入ってきたという。さらに秋季キャンプの前には、Bが見知らぬ男性を連れて現れ、「この人は警察の偉い人にもNPBにも通じている」と紹介された。男性からは「何かスキャンダルの情報はないか。それがあれば高木君の名前をもみ消せるかもしれない」という意味のことを言われたが、高木は「知りません」と答えたという。

 巨人は高木を謹慎処分とし、事態の全貌について調査するためBと笠原に連絡したが、Bとは連絡が取れず、笠原は「かかわりたくない」と言い続けているという。巨人から「Bが週刊文春に情報提供している可能性がきわめて高い」という説明もあった。ならば、この人物は、いったい事実を隠したいのか、さらしたいのか。

 巨人から相談を受けた警視庁も今後、全容解明に向け、動き出すというが、賭博罪は司法でも扱いが難しいもので、発覚しても逮捕まで至らないケースが多い。今回も4選手の逮捕やさらなる球界の汚染を警察が解明するというわけではなく、この野球賭博の背後に裏社会の存在があるかどうかの捜査になっていくはずだ。球界の健全化は、「野球協約」に則り球界がしっかりと覚悟を決め、自浄を続けていくしかない。

3月8日の会見で事件の経緯を説明。最後、深々と頭を下げた巨人の久保社長[左]と森田清司総務部長

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