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スカウトが明かすドラ1の舞台裏

ロッテ球団本部長・松本尚樹氏が明かす佐々木朗希(大船渡高→ロッテ) 令和に名を残す侍エースへ 「高校生のスターが良い影響を与え、周りの選手も育っていく」

 

「高校生最速」と言われる163キロを計測。潜在能力は抜群だが、この3年間、フルで投げた時間は短い。甲子園をかけた県大会決勝は故障回避のため投げず、高校日本代表でも右手中指の血マメの影響で1イニングのみ。「令和の怪物」をどう育成するのか。その手腕が問われている。
取材・文=岡本朋祐

大船渡高で最速163キロ。ロッテは170キロへの期待を込めて、背番号「17」を渡した/写真=井沢雄一郎


 決断は早かった。チームの「顔」となり得る存在とはやはり「生え抜き」である。ファンを大事にするロッテのここ数年のドラフト戦略は「高校生のスター選手」。2017年は履正社高・安田尚憲を外れ1位(3球団競合)で獲得すると、18年は3球団重複の末に、大阪桐蔭高・藤原恭大の1位入札に成功している。

 今年もその指名方針はブレなかった。内野手、外野手と来て、次なるターゲットはマリーンズを支えるエースである。3月31日、19年ドラフトの1位は事実上、決まったと言っていい。大船渡高・佐々木朗希はこの日の作新学院高(栃木)との練習試合が、19年の対外試合初登板だった。甲子園でのセンバツ視察を終えた全12球団のNPBスカウトが、矢板中央公園野球場に集結している。佐々木は甲子園常連校の強力打線を、3回1安打無失点(6奪三振)に封じた。自慢のストレートは、前年秋に計測した自己最速にあと1キロに迫る156キロを計測。MLB6球団を含めた約50人のプロ関係者の前で、圧巻の投球を披露している。

 ロッテは永野吉成チーフスカウトと、今年からブルペン捕手から東北担当となった柳沼強スカウトが、肌寒さが残るネット裏から熱視線を送った。

「スケールが違う」

 永野チーフスカウトはすぐに、松本尚樹球団本部長へ連絡を入れた。同本部長は現役引退後、スカウト一筋でロッテを支え、昨年12月21日に編成トップのポストの座に就いた。元内野手は現場と近く、井口資仁監督とも密にコミュニケーションを取る“ホットライン”が確立している。松本球団本部長は、元右投手である永野チーフスカウトの“目”にも全幅の信頼を寄せる。佐々木は翌週の4月6日、高校日本代表候補として参加した国際大会対策研修合宿のケース打撃で、自己最速を6キロ更新する163キロをマーク。1位の指名方針はこの時点で、大きく動いたという。

 7月19日、一戸高との岩手大会3回戦が松本球団本部長の初視察だった。「大谷(大谷翔平、花巻東高、現エンゼルス)を初めて見たときよりも・・・

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