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山崎武司 内野手 #7

有言実行を貫く44歳

 



 球界野手最年長の山崎武司が、青息吐息のチームに活力を与えた。一軍に再昇格したのは交流戦が開幕する5月14日。その時点ではチームは最下位に沈んでおり、グラウンドを暗い空気が覆っていた。「元気がないなあ。俺の知ってるドラゴンズはこんなんじゃない。一発、気合入れたらないかんわ」

 大ベテランが雰囲気を変えた。若手の尻をたたき、元気な声を響かせた。そして有言実行。交流戦が始まるやいなや、次々と最年長記録を塗り替えていったのだ。

 14日の日本ハム戦(ナゴヤドーム)では、1点ビハインドの場面に代打で起用され、右翼フェンス直撃の同点打。三塁まで激走し、44歳6カ月でのセ・リーグ最年長三塁打を記録した。さらに17日の楽天戦(ナゴヤドーム)では1点を追う9回の好機に、代打で逆転サヨナラ打をかっ飛ばした。こちらも最年長サヨナラ打のリーグ記録。「中年の星」がキラキラと輝いていた。

「特にサヨナラの方は世話になったイーグルス戦だったから、向こうのファンはバカヤローって思ってるかもしれないけど、まだまだ元気でやってるよってところも見せておかないとね」

 2年前に戦力外通告を受けた悔しさは、今も忘れてはいない。闘争心、執念を若手選手に見せた。チームも4連勝で、あっという間に3位争いするところまで引き上げたのだ。「こんなおっさんが必死で打って、走っているところを見せられれば、ファンも応援してくれる。情けない姿は見せられんもんね」

 老骨にむち打ち、巨体を揺らす。その姿はまさしく史上最年長のムードメーカーだった。
オーロラビジョン

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