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加賀美希昇 投手 #21

飛躍を期す3年目の遠回り

 



 チームにとっても、自らにとっても痛い誤算だった。昨季は終盤に先発ローテーションの一角を任され、3勝をマークして頭角を現した。だが飛躍を誓った3年目の今シーズン、加賀美希昇はまだ一度も一軍のマウンドに立てないままでいる。

 春季キャンプでいきなりつまずいた。一向に調整ペースが上向かず、途中で二軍での出直しを命じられた。再出発が決まった加賀美には友利投手コーチが約2時間、ハッパを掛けながらマンツーマンのノックを続け、厳しい言葉もぶつけた。ふらふらになった右腕と向き合い、友利コーチが約1500スイングもしたのは、すべては右腕に対する期待の裏返しだった。加賀美は「人生でこんなに長くノックを受けたのは初めて。デニーさんの愛を感じました」と雪辱を誓ったはずだった。

 じっくりとファームで体を鍛え直し、一軍昇格への道が見えてきたところでアクシデントが襲った。4月中旬のファームでの巨人戦(ジャイアンツ)。完封ペースの投球を続け、中畑監督に二軍首脳陣から『一軍ゴーサイン』が伝わった直後だった。左ワキ腹を痛め、途中降板を余儀なくされた。復活を印象付けるべく目指したマウンドは、再び遠ざかってしまった。

 加賀美だけではなく、同じく活躍を期待された国吉も腰に違和感を抱え、小杉も登板中に右肩を痛めて離脱を余儀なくされた。悲願のクライマックスシリーズ進出へ向けて戦いを続けるチームは先発陣のコマ不足という課題は解消されていないが、借金を抱えながらも何とか上位に食らい付いている。遠回りを強いられながらも右腕が貢献できる舞台はまだまだ残されている。
オーロラビジョン

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