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小笠原道大 内野手 #2

苦しむベテランと主将の一振り

 



 交流戦のハイライトは6月5、6日の日本ハム戦(東京ドーム)で文句がないだろう。ともに劇的な逆転勝ち。演出したのはベテランの2人だった。

 5日の主役は小笠原道大(写真)だった。1対1の延長11回無死二、三塁。代打で起用された背番号2は「配球は分からない。シンプルに自然に集中できていた」と来た球に無心で食らい付いていった。ファウルを重ね、8球目。増井の高めの149キロを力ではじき返し、右翼席に運んだ。サヨナラ3ランは2年ぶりの本塁打。常に冷静な小笠原も三塁を回り、ホームで待つ仲間が目に入ると両手を上げて大喜び。一昨年から不振に苦しんできた男は「いつか必ずチャンスが来ると思っていた。一日一日を大事に過ごしてきた」と穏やかな表情を見せた。

 小笠原に続いたのが阿部慎之助だった。翌6日。1対2の8回二死二塁。目の前で三番の坂本が敬遠気味に歩かされた。「僕と勝負されると、スイッチを入れた」と熱くなり過ぎず、静かに闘志を燃やした。初球で重盗が成功し、二、三塁とさらに好機を広げ、6球目。内角低めの難しい142キロを体の回転で鮮やかにとらえ、右翼席に逆転3ランを運んだ。少しでも右肩の開きが早ければファウルとなっていただろう当たり。「会心です」と高い技術が詰まった渾身の一振りを自画自賛した。

 今季の巨人は交流戦で苦しんだが、この2試合は満員のファンを大きく沸かせ、喜ばせた。お立ち台で、小笠原が「(本塁打は)気持ちがいい。チームに貢献できて、やっと一員になれたと思う」と言い、阿部は「最高です」とおなじみの台詞を口にし、大歓声を浴びていた。
オーロラビジョン

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